「エジプトでは普通、逆なんです」エジプト人と国際結婚した日本人ベリーダンサーが語る、生活してわかった“カルチャーギャップ”
政治への不満を口にしないエジプト社会の空気
――イスラエルとパレスチナの問題が長期化していますが、隣国出身者としてその思いを話したりは? HANA 今、エジプトも日本と同じで物価が爆上がりしているんですよ。でも、給料は変わらないから食糧難が増えていて。今まで毎日食べていた鶏肉が週に1回しか食べられなくなって、牛肉は1ヶ月に1回とか。それでも、彼は話さないです。 不安とか不満を言わなくなったのは、シーシー大統領になってからだと思います。 ――言論統制が敷かれている? HANA シーシー大統領の悪口を言ったらすぐ刑務所に入れられちゃうんです。「高速道路とかばっかり作って国民は飢えに苦しんでて、何が幸せなの?」と尋ねても、エジプトの人は、「いやいや、街はきれいになったよ」と言う。 ――夫のモスタファさんにもその影響が出ていると。 HANA 外国人妻の私にすら言わないですからね。あと、希望がないのかもしれないです。 2010年代前半の「アラブの春」(※)でムバラク独裁政権を倒したのに、結局、政治への不満を口にすれば自分の身が危ないほど、状況は悪化してしまった。だからみんな、「シーシー最高」と言ってなんとかやり過ごしているのかもしれません。 ※アラブの春:中東で2011年頃からはじまった大規模反政府運動 ――では、モスタファさんとしてはエジプトには戻らず今後も日本で生活を? HANA でも、日本の悪いところも分かっているというか。「日本人は顔と心が全然違う」とよく言ってます。「100パーセント受け入れます」という顔をしてても本心は全然違って、「そこはプロフェッショナルだ」と言ってます。 だから、そういう日本の側面を理解しつつも、「エジプトに比べたら全然いい」って話してますね。 写真=深野未季/文藝春秋
小泉 なつみ