「エジプトでは普通、逆なんです」エジプト人と国際結婚した日本人ベリーダンサーが語る、生活してわかった“カルチャーギャップ”
エジプト人にとってのお酒とは
――それは、イスラム教の教えに背いてお酒を飲んでいるから? HANA 教えももちろんなんですけど、まっとうな生き方をしていれば、エジプトでお酒に辿り着くことってまずなくて、基本的に街中でお酒が買えないんですよ。 ――そこまで厳しいんですね。
HANA お酒を売っているお店は電気もついてないような暗がりにあって、知っている人しか行けないような場所なんで、まず、まっとうな人は飲めないです。アーティストとか警察の上の人といったごく一部の特権階級を除けば、人前でお酒を飲むというのは本当にろくでもないことという認識なので、いわんやナイトクラブは、ということです。 そもそもエジプトでは、ナイトクラブで働いているベリーダンサーはいつでも逮捕できるんですよ。 ――そんなことがまかり通るんですか……。 HANA ベリーダンサーを取り締まる法律があるんです。例えば政府の高官が、「今日はちょっとムラムラするからベリーダンサーを派遣してよ」とナイトクラブに電話して、「ノー」と断ったらすぐ逮捕されたり。はたまた警官が、「今月は成績が厳しいな。じゃあベリーダンサーでも逮捕しとくか」といって逮捕するんです。
文句ばっかり言ってるけど実際はエジプト大好き
――HANAさん自身が危険な目に遭ったことは? HANA 私はナイトクラブでは踊らないので、それはないですね。フェスティバルの場合は、警察の許可を取らないと開催できないんですよ。だから、そこは絶対フェスティバルが守ってくれる。 それに、私がエジプトで安全にイベントが行えているのは、彼のおかげなんですよ。夫の家族のパイプとか。 ――モスタファさんはやんごとなき一族なのでしょうか。 HANA 本当にたまたまですけど、彼のお父さんがエジプト政府の関係者だったんです。 エジプトだと、例えば免許証の書き換えを普通にやろうとすると1ヶ月ぐらいかかるんですが、公権力に近い人だと、電話一本ですぐもらえてしまうんです。そういう世界なので、政府のコネクションがあるとないとでは、生きやすさがまったく違うんですよ。 ――エジプトの政治体制や男性優位な状況について、モスタファさんはどのように感じている? HANA 彼はほとんど何も言わないですね。逆に私はいつもエジプトの文句ばっかり言ってますけど(笑)、実際はエジプトが大好きで、「向こうに住みたい」ってよく話すんです。でも、そういうときだけ、「君はエジプトの外側しか見てないから」みたいなことをポロッと言ったりして。