【光る君へ】紫式部が「道長」の子を産んだ… 歴史を誤解させる「大河ドラマ」をどう考えるか
超えてはいけない一線を越えてしまった
例年のNHK大河ドラマにくらべて、今年の『光る君へ』の目立った特徴は、ラブシーンが多いことです。このところ、一条天皇(塩野瑛久)と中宮定子(高畑充希)が目立ちましたが、主役の2人、藤原道長(柄本佑)とまひろ(吉高由里子、紫式部のこと)のラブシーンも、もう何度も流れています。 【写真】「歴史ドラマ」の一線を超えた…紫式部(まひろ)が産んだ「賢子」 ほか
しかし、道長と紫式部は、ともに貴族とはいえ身分が隔たっています。だから、2人が幼少期に出会っていたというだけならともかく、その後も惹かれ合い、頻繁に会って深い関係になり、別れたのちもたびたび遭遇した、という可能性になると、「絶対になかった」とは言い切れなくても、かぎりなくゼロに近いと思われます。そもそもこの時代、貴族の女性は異性にみだりに顔を見せてはいけない決まりで、出歩くことも少なかったから、「遭遇」なんてしたくてもできませんでした。 とはいっても、大河ドラマはあくまでもドラマ。とくに紫式部は、生没年もふくめてわからないことだらけなので、架空の恋愛でドラマを引っ張る必要があったという事情もわかります。でも、大河ドラマは「歴史ドラマ」です。NHKが「歴史ドラマ」という言葉を使っているわけではありませんが、学者が時代考証を担当しているという事実からも、史実を踏まえた創作を試みていることはあきらかです。 したがって、フィクションを交えるのは当然だとしても、節度が求められるはずです。疑いの余地がない史実を無視したり、その時代の通念とかけ離れた考え方を導入したり、おもしろさを優先して、史実を見えなくしてしまったり――。そんなことは避けてほしいと願います。歴史への「誤解」ではなく「理解」をうながしてほしい。そう考えます。 しかし、『光る君へ』は第27回「宿縁の命」(7月14日放送)で、そこを超えたら歴史への誤解が大量に生じかねないという一線を、ついに超えてしまいました。なにしろ、まひろが道長の子を産んだのですから。