【競輪コラム】ありがとう“神様” 最後まで自転車を愛し、競輪を楽しんだ神山雄一郎
G1通算16勝の神山雄一郎(56=栃木・61期)が24日、会見を行い同日付で引退した。通算909勝、獲得賞金29億円超のレジェンド。全盛期は取材していないが、検車場で見た現役終盤もカッコ良かった。そのラストランとなった21~23日の取手も、変わらず“競輪の神様”だった。 誰よりも競輪を楽しんでいた。心に決めたラスト開催。初日は絶好の展開もハコ3だった。2日目、先行1車の番手で白星のチャンス。ただ、中村昌弘に競られ、最下位の6着に終わった。レース後、中村が「申し訳なかったです。すみません」と選手道として深々と頭を下げた。それに対して、神山は「全然、全然。ありがとうございました」と頭を下げ返した。そして、弟子の飯嶋則之らとレースを振り返りながら「重かったな~。いっぱいになっちゃった。くそー」と笑顔を見せながら、勝負師として悔しそうに口にした。こんなに競輪を楽しむ選手は見たことがない。 誰よりも自転車を愛していた。最後の最後まで手は抜かない。神山はいつも通り、どの選手よりも検車場に長くいた。軍手で手を守りながら、丁寧に丁寧に自転車整備。3年前に自転車整備への思いを聞いた時、「逃げ道をなくさないと、前には進めないでしょ。もしやめる時になって、あの時整備をしていなかったらって思ったら嫌だしね」と教えてくれた。まさにそのやめる時まで有言実行。言い訳をつくらず戦い抜いた結果、ラストランの1着があった。 好きなことを、楽しんで、そして全力でやる。自転車を、競輪を愛した神様。自転車と競輪も神山雄一郎を愛していたに違いない。走りはもちろん、最後まで存在そのものが本当にカッコ良かった。長い間、本当にお疲れさまでした。そして、たくさんの感動をありがとうございました! ◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の29歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。22年は中央競馬との二刀流に挑戦。23年から再び競輪1本に。愛犬の名前は「ジャン」。母は神山雄一郎の大ファン。五輪に出場した際には花を送ったり、ある時は家にまで行ったりしていたそうで…(神山さん、すみませんでした…)。