ドラゴンボール、コナン…日本のエンタメにサウジが熱狂 有望市場に急浮上
【リヤド=根本和哉】「砂漠と油田の国」という印象を抱く人が多いであろう中東サウジアラビアで今、日本のアニメや漫画などのエンターテインメントコンテンツが人気を博している。サウジは石油に依存する経済からの脱却を目指しており、新たな産業としてエンタメを根付かせたいとの国家戦略があるためだ。日本の関連企業はこれを好機と捉え、サウジで市場開拓を始めている。 【写真】日本アニメやゲームの愛好家として知られるサウジのムハンマド皇太子 休日には多くの人でにぎわう、首都リヤド郊外の巨大商業施設。その一角に、人気漫画「ドラゴンボール」の孫悟空や「名探偵コナン」の江戸川コナンの人形が飾られた店舗がある。日本のアニメや漫画のグッズの販売店「Nippon Sayko(日本最高)」だ。店内にも人気キャラクターのグッズが所せましと並べられ、まるで日本にいるかのような錯覚に陥る。 ■テーマパークに共同製作アニメも オーナーのノハ・カヤットさんは日本のアニメや漫画の魅力について「ストーリーが複雑かつ豊かで、ユニークな性格を持つ多種多様なキャラクターにも共感できる」と語る。今後はより幅広いグッズを取り扱うために、日本企業との連携を強化するほか、イベントなどを企画することも目標だという。 サウジでは今年に入り、世界初となるドラゴンボールのテーマパークの建設が発表されたほか、日サウジのプロダクションが共同製作したアニメの放映が始まるなど、エンタメ産業の動きが活発化している。アニメやゲームの愛好家として知られるムハンマド皇太子が旗振り役となり、高品質な日本のエンタメを手本としたコンテンツ制作や人材育成を強化してきたことが背景にある。 ■「産業化、サウジは本気」 現地ではすでに、日本企業が日本発のエンタメコンテンツの発信に取り組む動きが出ている。サウジを中心とする中東地域で、紙芝居や漫画、アニメなど日本文化の紹介やイベントへの参画などを手がける企業、漫画家学会(東京都渋谷区)の小林勝海取締役営業統括部長は「サウジは本気で(漫画やアニメなどの)自国での産業化を推し進めている」と話し、現地での活動に手応えを感じていると明かす。 今後は現地に拠点を作り、積極的な文化交流を行うことも視野に入れているという。小林氏は「イベントで集客し、最終的にはメイド・イン・ジャパンの製品を現地の人に買ってもらって日本経済の活性化に貢献したい」と目標を語った。
市場調査会社モルドールインテリジェンスは、サウジのエンタメ・アミューズメント市場の規模は2024年時点の25・5億ドル(約3900億円)から、5年後の29年には約1・6倍の42億ドルに拡大すると予測する。「日本のお家芸」であるエンタメ産業が、中東でさらなる成長を遂げる日も近そうだ。