パンと牛乳、ヨーグルト。朝食後に腹痛と下痢が起こる人は「過敏性腸症候群(IBS)」の可能性大
脂質やFODMAP(発酵性糖質)により下痢をする「消化不良型」
消化不良型は、脂質やFODMAP(フォドマップ=発酵性糖質)などの食材による消化不良で下痢を起こすタイプです。久里浜医療センターの下痢型IBSの約5%、ガス症状(腹部膨満)で来院される人の約10%を占めます。 近年話題になっているのが小麦や乳糖、ねぎ、にんにく、りんご、大豆などのFODMAPです。慢性膵炎などの病気を除いて、これらの食材で消化不良になりおなかを壊しやすいのは「体質」のようなものです。 消化吸収能力には著しい個人差がありますが、FODMAPや脂質などはそもそも人類が消化吸収しにくいものです。消化吸収されない糖分は、腸の中で水分を保持して腹部膨満、下痢を引き起こします。糖分が大腸に達すると、腸内細菌により発生したガスが、さらに強い症状を引き起こします。 消化不良によるIBSだと気づかないと、原因となる食事をしつづけます。症状が軽減しないまま、やがて強い腹部膨満、腹痛、鼓腸症状(ガスが大量にたまる)を引き起こしかねません。 【消化吸収の問題】 ●食材 脂肪分の多い食材や、豆類や根菜類など食物繊維が多い食材は、消化が悪いことはよく知られます。食材関連で下痢やガスの原因となる代表的なものとして、脂質とFODMAPがあります。 ●腸の能力 腸の消化能力が低いと、他人と同じものを食べても消化不良となり、栄養分を多く残した不消化便が腸の中に存在することになります。不消化便は水分を腸の中にとどめ、下痢の原因となるとともに腸内細菌の異常発生と発酵を起こしてガスの一因となります。
「消化不良型」の下痢が起こるメカニズム
【メカニズム】 消化吸収能力が高くない体質 ↓ 消化吸収が不得手な脂質やFODMAP(発酵性糖質)の摂取 ↓ 消化吸収が不十分な食物残渣(食物の残り)が小腸や大腸に届く ↓ 不消化の食物残渣によって大腸内の水分が多くなり、下痢が起こる ↓ 腸内細菌により不消化の食物残渣の過剰発酵が起きる ↓ 強い腹痛、下痢、悪臭を伴うガスや放屁 IBSでは小麦を気にする方が多いですが、小麦は高FODMAPの筆頭で、炭水化物76%、タンパク質8%からなります。炭水化物の主体のデンプン(多糖類)は「難消化性デンプン」レジスタントスターチを含みます。たしかに、食べすぎると下痢になります。 食物アレルギーの原因食物として小麦は卵、牛乳に次ぐ第3位で、体質的に受けつけない人が多い食材でもあります。便がゆるいだけならともかく、違和感や腹痛がある場合は、小麦の制限が必要かもしれません。 第1回〈電車に乗れない、外食できない……。腹痛と下痢をくり返す「過敏性腸症候群(IBS)」を克服するヒント〉から読む
水上 健(国立病院機構久里浜医療センター内視鏡部長・慶應義塾大学客員講師(IBS便秘外来))