「男性は私1人だけだった」 着物学校に入った黒人男性が苦労した結果得た「かけがえのないもの」
何年も勉強した後、ハリスさんは着物への愛情を、自分の生徒たちに教えることで示している。 ■日本人に着付けられたときの「トラウマ」 ボストン出身で日本に長期滞在している40代の及川多美香さんは、ハリスさんの最初の生徒の1人だ。及川さんに、日本人の着物の講師ではなく、なぜハリスさんを選んだのかを尋ねたところ、彼女は日本人講師との「トラウマ的体験」についてこう話してくれた。 「泣きそうになるくらいパットを詰められたのです。体の凹凸をなくすためだと思いますが、そうするためにどれだけのパットとタオルが必要だったか……」と彼女は身振りを交えながら”惨状”を語った。
「私は歩くことさえできなかったのに、それでも講師は私の体が均等に見えるように詰め続けました。ただそうすると私の体は実際より大きく見えてしまう。私はすでに大きめなのに。いちごロールケーキのような気分になって、もう二度とこんなことはしないと自分に言い聞かせました」 「メリハリがある体型の黒人女性が、日本人と同じような体験をすることは難しい」と及川さん。黒人女性はアジア女性よりも豊満で、着物のような伝統着の着こなし方も日本人のそれとは異なる。つまり、日本人が黒人女性を着付けるのは難しいのだ。
「でもカーラ自身も豊満な体型の女性だから、どう着付ければいいのかよくわかっていました」と及川さんは語る。 ハリスさんは高騰師範になることをとても楽しみにしている。彼女は教師という仕事に愛着を持っているが、同時に着物教育も続けるつもりだ。それもそのはず。「私は20年間、人生の半分以上を日本で過ごしてきて、着物は私の人生の大きな一部になっています。それがすぐに変わるということはないでしょう」。
バイエ・マクニール :作家