フィリピンに飛んだ親父が人身売買のブローカーに!? 豪邸には十数名の現地女性たちがいて…「ぼくは『幸せ配達人』なんだよね」
オーディション審査員は脂ぎったおっさん一人
当然、半年間を待たずに逃げ出す女性もいるけど──それをランナウェイというらしい──ほとんどの女性は半年間、がんばってお金を貯め、それから帰国して、貧しい暮らしをする両親のために豪邸をドカンと建てる。しばらく気楽な時間を過ごし、結婚して子どもを儲け、育児が落ち着いたら、多くの女性が「もう一回、日本に行って稼ぎたい」と言い出すらしい。 そのときに人間ってすごいなって思いましたね。最初は嫌でも、大金が転がり込むとそんなに変わっちゃうんだって。もちろん、「騙された!」って嫌がる女性もいるんでしょうけど、多くは二度目や三度目の日本をめざすんですからね。 それに、親父の家でオーディションみたいなことをやったときもすごいんです。たとえていうと、むかしテレビ番組であった「スター誕生」みたいな感じ。 まぁ、審査員はだいたいフィリピンパブオーナーの脂ぎったおっさん一人なんですけどね。そのおっさんの前で、フィリピン女性が「これでもか!」っていうぐらいアピールをするワケです、露出度の高い水着を着てね。そりゃ、露骨な行為はしませんが、それに近いことはやる。 でも、彼女たちにとって、日本はなんとしてでも行きたい国になっていたんでしょうね。 で、タカログ語で「タタイ」(お父さん)と呼ばれていた親父は、「ダイスケ、わかった? いわばぼくは、『幸せ配達人』なんだよね」なんて、とぼけてやがる。 文/近藤令
---------- 近藤令(こんどう れい) 1970年生まれ。東京都港区東麻布出身。19歳で、漫画家の谷村ひとしのアシスタントに付くが、約1年でクビに。フリーターのような生活を経て、父が暮らすフィリピンへ。帰国後、先輩漫画家の早坂よしゆきの連載を手伝いつつ、再び漫画家として活動を再開。第29回ちばてつや賞ヤング部門優秀新人賞、第32回ちばてつや賞ヤング部門佳作を受賞。パチンコブームの到来により、各雑誌で実録パチン コ漫画作品を手がけ、連載数本を掛け持ちする人気作家に。ブーム終焉と共に、収入が激減。廃業危機を乗り越え、フィリピンで過ごした父親との日々を描いた『ココ・ロングバケーション』(2021年/講談社)が、モーニング・ショート漫画大賞の矢部太郎賞を受賞。その後、Web漫画に活動を移し、『ゾンビ島(キリド)』(2023年/ソルマーレ編集部)などの作品を発表。50歳を越えた今も、新作発表に向 け、精力的に創作活動を続けている。 ----------
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