フィリピンに飛んだ親父が人身売買のブローカーに!? 豪邸には十数名の現地女性たちがいて…「ぼくは『幸せ配達人』なんだよね」
「これ、本当に俺の親父か?」
そりゃ、もともと料理人というか水商売の人だったから、多少なりとも怪しい雰囲気は昔からありました。でも、いきなりアロハシャツで、サングラスをかけて、こんがり日に焼けた親父が、久しぶりに目の前に現れたんですから。最初は「これ、本当に俺の親父か?」って、疑いましたよ。 親父の方は、「感動の親子の再会」っていう感じじゃなくて、「いやー、元気だった? ダイスケ、キミはなにしてんのニッポンで?」みたいな、めちゃくちゃ明るいノリでね。 しかも、両脇にボディガードまで付けて、むかし大分県で出会った頃よりも羽振りがいい感じなんですよ。ともあれ、誘われるがまま、車に乗って「マラボン」というエリアにある親父の家まで向かったんです。 マラボンは、フィリピンで最も人口密度が高い場所で、標高の低い平地が多く、高潮、豪雨、川やダムの決壊の際には洪水が起きる、はっきり言うとスラム街です。洪水は深刻で、川岸に住む住民が最も被害を受けるけれど、最近は堤防を越えて人口密集地まで襲うようになっているそうです。 親父も車中で、マニラはどこもかしこも危ないから、現金は靴下の中に入れておくこと、メーターのついてないタクシーにはぼったくられるから絶対乗ってはいけないこと、誰にも気を許さないこと、警官といえども信用してはいけないことなど現地での作法を色々教えてくれました。 「そんな危なかっしい場所によく住んでるよな」と思いつつも、親父の自宅に到着したら腰を抜かしました。刑務所のような塀が周囲を囲む大豪邸がドーンっと目の前に建ってたんです。 玄関の自動ドアが厳かに開いて、車で中に入ると、親父の家というのが、要塞というか「ひばり御殿」みたいに豪華絢爛な造りでね。「ここが、本当に親父の家なの?」って聞いたら、「ふん」とそっけない感じでね。もし、政変とか革命が起こったら、まっさきに地域住民に攻め込まれそうな建物ですよ。しかも、そこが仕事場でもあるっていうんだから、ますますどんな仕事してんだろうって、下世話な好奇心が湧いてきました。