東京都写真美術館で「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために」が開催へ
東京・恵比寿の東京都写真美術館で、「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために」が開催される。会期は2月27日~6月8日。 鷹野隆大(1963~)は、写真集『IN MY ROOM』(2005)で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞し、現在も国内外で活躍を続ける写真家・アーティストだ。その写真集に代表されるセクシュアリティをテーマとした作品と並行し、「毎日写真」や「カスババ」といった日常のスナップショットを手がけ、さらに東日本大震災以降は、「影」を被写体とした写真の根源にせまるテーマにも取り組んでいる。 同展は、東京都写真美術館の総合開館30周年を記念して実施される展覧会のひとつ。タイトルである「カスババ」とは、鷹野の代表的な作品シリーズの名称であり、カスのような場所(バ)を意味する造語でもあるという。会場では、日常をテーマとしたスナップショットシリーズを中心に、初公開作品も含めた約120点を紹介。写真のみならず、映像、インスタレーションと多岐にわたる表現方法で、実験、再編しながら新たな表現に挑戦し続ける鷹野の制作にせまるものとなる。 主な出展シリーズは、「毎日写真」(1998~)、「カスババ」(2001~10)、「カスババ2」(2011~20)、「IN MY ROOM」(2002~05)、「おれと」(2006~)、「Red Room Project」(2018~)、「CVD19」(2023)。 「カスババ」とはわたしの造語で、滓(カス)のような場所(バ)の複数形である。 この国に暮らしていると、どうしようもなく退屈で取り留めのない場所によく出会う。かつてはそんな場所に出会うたびに、なるべく見ないようにしたものだった。しかしあるときから、そんな場所こそが自分のもっとも身近な場所であり、自分の思考を育んできたものではないかと考えるようになった。 鷹野隆大(同展図録より引用) また、展示空間は建築家・西澤徹夫が担当する。鷹野が提示した「都市空間」をキーワードに西澤が空間を構成し、それと並行して鷹野も作品構成をさらに変化させてくという複層的なプロセスを経て設計されており、整備された公園や、煩雑な路地裏、相矛盾する要素を取り入れた、都市のような空間を自由に回遊することで鷹野の世界観を体感できる空間となっている点にも注目だ。 図版はすべて ©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates