名古屋城エレベーター設置問題 河村市長の「1、2階までなら合理的配慮」発言に障害者団体抗議 なぜこのような事態が起きる?
名古屋の誇りが名古屋の価値を下げる?
この復元事業は市議会も承認しており、これまでに70億円を超える予算が投入された。名古屋市としては、もはや引き返せないところまできている状況だ。河村市政はすでに4期13年に及んでいる。河村市長は4期目に挑戦した2021年4月の市長選挙を前に「5期目は目指さない」と発言しており、その言葉を素直に信じれば2025年4月の任期満了をもって退任することになる。しかし木造復元事業に強硬に反対する人物が次の市長にでもならない限り、計画はこのまま進んでいくことになる。 その結果完成するのは、当初、河村市長が思い描き、歴史好きが待ち望む「やがて国宝になる完全復元天守」とは程遠い代物だ。筆者は、そのようにして造られた木造天守が世の笑いものになってしまうことを危惧している。「江戸時代と寸分たがわぬ木造天守」という触れ込みだったのに、史実とは異なる部分に階段があり、史実にはありえない昇降機が取り付けられているのを見て「え、これなの?」と苦笑されては、「名古屋の誇り」として建てられたものが、逆に名古屋の価値を下げかねないのではないか。 今からでもまだ遅くはない。「昔のままの完全復元ではない」「耐震・耐火・バリアフリーの城」になることを名古屋市は広く知らしめてほしい。そして、その上で「木造で建て替えるべきかどうか」をもう一度市民や世の人々に問うてもらいたい、と願うばかりだ。