「DOGEコイン」急騰とイーロン・マスクの“匂わせ”…真の狙いを探る
暗号資産・仮想通貨の「DOGEコイン」が急騰しています。興味を持って投資したいと思う人が増えているようですが、そもそもDOGEコインとは何でしょうか?ドナルド・トランプ氏の右腕で、起業家のイーロン・マスク氏が、このコインの動向に深く影響を及ぼしている理由とは?一連の流れをおさらいしながら、マスク氏の思惑を考えます。(トライズ 三木雄信) ● イーロン・マスク氏お気に入り 「DOGEコイン」が急騰のワケ 起業家のイーロン・マスク氏の「大のお気に入り」と言われる、暗号資産・仮想通貨、「DOGEコイン」の価格が急騰しています。マスク氏がSNSのX(旧Twitter)の決済サービスに、DOGEコインを導入することを“匂わせ”た影響によるものです。 マスク氏といえば、電気自動車(EV)のテスラや宇宙ビジネスのスペースXを創業した実業家で、大富豪としても知られる人物。加えて最近は、ドナルド・トランプ次期大統領の右腕としても頭角を現しています。 マスク氏は、次期トランプ政権の「政府効率化省(通称DOGE=Department of Government Efficiency)」にも参加予定です。同省のトップには、バイオテクノロジー分野の起業家で、一時は共和党の大統領候補者レースにも参戦したビベック・ラマスワミ氏の起用が発表されています。 DOGEコインは11月に入ってから約3週間で150%以上も上昇しています。そして、インターネット上の口コミや各種記述を見る限りは、今後も盛り上がりが期待されているようです。 しかし、安易な気持ちで「DOGEコインに投資してみたい!」と思う人が増えることには、筆者は複雑な思いを感じています。急騰の背景には、どんな動向があるのでしょうか?
● DOGEコインは「ミームコイン」 可愛らしい柴犬の写真から派生 そもそも政府効率化省(DOGE)という機関は、現在はまだ存在していません。それだけでなく、今後も連邦の政府機関として位置付けられる予定はありません。あくまで、政府の諮問機関として助言する立場に位置付けられています。 日本で言えば、かつて昭和の時代にあった、行政の適正・合理化について調査・審議するために旧総理府に設置された諮問機関、「臨時行政調査会」に近いものと言えるでしょう。 そして、DOGEコインのDOGEとは、トランプ次期政権に関するDepartment of Government Efficiencyの頭文字ではありません。DOGEコインを前から知っている人には周知の事実なのですが、大統領選挙後のマスク氏の動向とごっちゃになって、知らずに勘違いする人も増えていると思います。 DOGEコインは、2013年に生まれた「ミームコイン」です。ミームとは、インターネット上で人から人への拡散していく文化や行動のことを指します。DOGEコインは、当時人気だった可愛らしい柴犬の写真に、意図的に間違ったスペルの「DOGE」が付いたミームから派生したとされています。 その目的は、当時の仮想通貨ブームを風刺することだったのです。DOGEコインは、ビットコインをベースに作られていますが、発行上限が設定されていない仮想通貨であり、ビットコインとは違った値動きを見せています。 このようなDOGEコインに、世界中の注目が集まるきっかけを作ったのがマスク氏です。19年4月にマスク氏がドージコインを「お気に入りの仮想通貨」とツイートした結果、DOGEコインの価格は2倍(0.002ドル→0.004ドル)になりました。 続いて21年12月には、マスク氏がCEOを務めるテスラが、DOGEコインを決済手段として導入すると発表しました。すると今度は、DOGEコインの価格が0.15ドルから0.21ドルに上がりました。 さらに23年4月4日、旧Twitterのアプリ左上に表示されるロゴが、青い鳥から柴犬に変わったことがあります。これについてマスク氏は、「約束通り」とつぶやきました。その結果、DOGEコインの価格は約14%、0.09ドルに上昇したのです。 翌24年1月には、マスク氏が経営するスペースXが「DOGE-1ミッション」を発表。この時も、DOGEコインの価格は0.10ドル→0.15ドルに急騰しています。 そうして今年11月、米大統領選におけるトランプ氏の勝利を受け、DOGEコイン価格は0.20ドルから上昇。同月25日、冒頭でも述べた通りマスク氏が“匂わせ”を行ったことでさらに急騰している、という流れです。