恐竜の体の色の復元は可能か(下) 最新技術を用いた研究が導いた光明
尻尾に付いていたフィラメントはライト・グリーン系だろうか。復元イラストを見てみると、非常に長いのが印象的だ。どうして尻尾にだけに生えていたのだろうか? 果たして生存時、具体的に何の役にたったのだろうか? 成体・幼体において違いがあるのだろうか? 新たな疑問が次から次へと湧き上がってくる。 さて中生代の恐竜や海生爬虫類等の体の色を知ることで、我々は何を学べるのだろか? カラフルな色をした種は(進化上)特定の恐竜グループだけに見られるのだろうか? 初めて恐竜の進化上派手な色のボディーを手に入れた種はだれ(どれ)だろうか?(そしてその理由は?)オスとメスでカラーの違いはどれだけあったのだろうか?(恐竜の社会性など分かるかもしれない。)こうした興味深い問いかけにいずれ答えられるかもしれない。
ヴィンサー博士は恐竜の体の色を復元することで、白亜紀当時のより詳細な生態が推測できると考えている。先述したようにグリーン系のこのプシッタコサウルスは、うっそりと茂った林や藪のような場所に隠れることの適応――いわゆるカモフラージュの役目をしていたと結論づけている。カモフラージュを必要としていたということは、逃げ足はそれほど速くなかったのだろうか?(速ければ隠れる必要などなかったはずだ。)具体的にどのようなプレデターがいたのだろうか?(視覚がそれほど優れていなかったことを祈るばかりだ。)真相は今のところ「藪の中」に潜んでいるようだ。 新たなテクノロジー(技術)の発明・発展が新事実・新発見をもたらしてくれることは、サイエンスの歴史上、数え切れないほどの例がある(例えば1500-1600年代の顕微鏡の発明をきっかけに進展した細胞の研究)。しかしこうした最新技術をどのように用い、そしてどのような興味深いサイエンス上の隠されたストーリーを導き出すか(いわゆる仮説の検証)。こうした研究上の思考プロセスは古今東西、コンピューターなどの計算によっては決して生み出されないはずだ。おそらく研究者の知的好奇心がカギとなるように私には映る。一恐竜研究からのメッセージ。