恐竜の体の色の復元は可能か(下) 最新技術を用いた研究が導いた光明
さて一つの斬新な研究は他の研究者を惹きつけるのは、世の慣わし。新しくオープンしたレストランにできる長い行列のようなもの。最近10年ほどの間、化石脊椎動物種―特に中生代の爬虫類―の色の復元は、ますますポピュラーになってきているようだ。私の知る限り例えば恐竜だけでなく、中生代の海生爬虫類モササウルスやイクチオサウルスなど(注:恐竜とは全く別の爬虫類のグループ)のボディーカラーの研究なども最近発表された(Lindgren等2014)。
さてここで一時、日常の雑事などを忘れて恐竜などが生きていた「中生代」へと思いをはせていただきたい。中生代は約2.5億年前―6600万年前の地質年代にあたる。非常に長大な時間の流れを経て、どれくらいの確率で恐竜の死体は、化石として現在発見されることができるのだろうか? 例えば約1.5億年前(ジュラ紀後期)の超大型竜脚恐竜スーパーサウルス(Supersaurus)の死体は、すぐに大小さまざまな他の動物たちによって跡形もなく食い散らかされたことだろう。大雨や洪水等によって引きちぎられた死体もあったことだろう。腐敗及び風化して粉々に塵と化し、その姿を我々に見せることなく永遠に消え去ったものが、おそらくほとんどだったと想像される。運よく土砂等に埋もれたものだけが化石として保存される可能性があったはずだ。しかし、いまだに地中に埋もれたまま、人知れず発見されるのを待っているものも多数あるの違いない。 今日我々が目にすることのできる中生代の化石は、実は奇跡的に保存及び発見されたものなのだという事実――おそらく天文学的な確率で起こる現象なのだろう。そして(足跡を除く)恐竜の化石記録は、そのほとんどが硬質な体の部位(骨と歯の標本)にもとづくという事実は、恐竜展など訪れたことのある方なら自明の理だろう。柔らかな体の部位、例えば筋肉や内臓などの化石は(ほとんど)見たこともまた聞いたことさえないのではないか?「恐竜の皮膚の化石」が見つかることなど、まったくの夢物語に響くかもしれない。