「どう死ぬか」ホームホスピス、笑って過ごすもうひとつの家
介護が必要になった場合、あなたはどこで残りの人生を過ごしたいだろうか。最期はどこで死にたいだろうか。2030年には、看取られる場所のない「看取り難民」が49万人出ると言われている(中央社会保険医療協議会、平成23年)。選ぶ余地なく、遠く離れた施設に入る。面会も来ず、天井をぼんやり見る毎日。そんな最期が待っているかもしれない。 いま全国的に注目を集めつつあるのがホームホスピスだ。家庭的な一軒家のホスピス、と言っていい。在宅での看取りを続ける診療所で働いてきた仙台市のケアマネジャーは、自らホームホスピスを立ち上げた。なぜいまホームホスピスなのか。死に方のいまを見る。
胃ろうをしてたってお酒は飲みたい
とある日の夕食。大きなテーブルの上に、大皿に盛られた料理の数々が運ばれてくる。住人がリビングに集まってきた。酸素チューブを手にしながら来る人、スタッフに車いすを押されて来る人。スタッフも食卓を囲む。
気管切開をし、胃ろう(胃に穴を空け、そこに挿し入れたチューブから栄養を入れる)のある70代の男性が、車いすで連れられてきた。 用意されたのは、日本酒の注がれたグラス。他の住人が食事を摂る中、男性は栄養チューブをつないだまま、介助の手を借りて酒を味わう。 「へえそうなんだ、知ってました?」「○○さんはいつもそうだよなぁ、そう思うだろ?」 住人やスタッフが男性に声をかける。男性の反応を見てどっと笑いが起こり、本人も満面の笑みを浮かべる。声が出せなくても、団らんの中で、住人達と晩酌を楽しんでいる。 日によっては、以前住人だった人の家族やスタッフの子どもも遊びにくる。まるで、親戚の集まりだ。 「ホームホスピスは、大きな家族みたいなものです」。話すのは、一般社団法人月虹の代表理事、今野まゆみさん(54)。今野さんが運営するのが、宮城県仙台市にあるこのホームホスピス、「にじいろのいえ」だ。
基本は個室、アレンジ自由。夫婦で入居も
仙台の市街地から車で約25分、自然が残るのどかな住宅街の一軒家がにじいろのいえだ。煉瓦造りの塀と広い庭に囲まれ、ウッドデッキも備え付けられている。 玄関を入り廊下を抜けると、住人が集まるリビング。ケア度が高い人は相部屋になるが、基本的には6畳弱の一人部屋が用意され、テレビや冷蔵庫、仏壇など思い思いに私物を持ち込み、自分の部屋をアレンジできる。 現在は47~91歳の7人が、住人として暮らしている。自ら車を運転し外出する人もいれば、人工呼吸器をつけて寝たきりの人もいる。