大量集客で満足度ダウン 日本の観光地はすでに「待ったなし」状態に 観光客狙いの割高料金と「文化財を守るための値上げ」は別物 姫路城などの「二重価格」問題で議論が混乱
「外国人観光客の入場料4倍にしてはどうか-」。 姫路城の入場料に関する姫路市長の発言に、賛否の声が上がった。 確かに海外旅行先で、地元の人との価格差を感じたことはあるが、国内ではあまり聞いたことがない。円安で海外からの観光客が各地であふれかえり、オーバーツーリズムが深刻だ。この状況、どうすれば解決できるのか。 マーケティングの視点から観光ビジネスや地域づくりを研究している、立教大学観光学部の東徹教授に話を聞いた。
■そもそも議論が混乱している
姫路城は国宝であり世界遺産です。 「貴重な文化財を守り、後世に伝える」ということと、「円安で割安感が強まっている外国人観光客向けに“二重価格”を導入する」ということとは、まったく別の問題です。 姫路城の入場料は、貴重な文化財を、将来にわたって保存し利用していくためにはどうすればいいのか、という視点から議論すべきであって、例えば旅館が「日本酒を注文した外国人観光客にはお猪口代まで込みの価格を設定する」のとは本質的に違います。 「姫路城を守りましょう」という議論が、二重価格や外国人料金の話に置き換えられてしまっている。「文化財の保存・活用の問題」と、「二重価格や外国人料金の問題」は別に議論するべきことです。
■「30ドルが相場だ」という話ではない
文化財の保存にはお金がかかります。姫路城の場合、400年以上前の建物を美しく保つわけですから、毎年のメンテナンスに莫大な費用がかかり、一般公開をしているので人件費や清掃コストも必要です。それらを合わせると年間12億7000万円ぐらいの維持費がかかっているといわれています。 さらに、何十年かに1度、大修理が必要になります。修理に必要な材料の確保、技術の継承や人材の育成も必要になるでしょう。平成の大修理が24億円かかったといわれていますが、次は30億円以上かかるかもしれません。その費用を積み立てていかなければならないのです。 「国宝であり、世界遺産である姫路城を未来につないでいくには、これだけお金がかかります。だから皆さん、入場料をこれだけ下さい」ときちんと根拠を示し、理屈をたてて説明すればよいのではないでしょうか。 「世界各地の有名な文化遺産の料金が30ドルぐらいだから」という話ではないと思います。 外国人観光客だけ高い料金を設定するということではなく、入場料そのものを高く設定し、そのうえで「割引」制度を導入すればいい。地元の人や高齢者、学生といった、社会通念上、認められる範囲で割り引く形にすればいいと思います。
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