犬猫「殺処分ゼロ」 その裏に隠されたボランティアらの苦悩や模索
交流会で協力関係、ふるさと納税も活用
センターには、こうした犬や猫の譲渡ボランティアとして約60の個人や団体が登録しています。鈴木さんのような犬の訓練の専門家から、シェルターを持ってNPO法人として活動している団体、犬が好きな主婦仲間のグループまでさまざまです。 「愛護センターの主催で、譲渡ボランティア同士の交流会があるのがとてもいい」と話すのは、同市緑区で犬のデイケアやしつけ教室「Pooches」を経営する譲渡ボランティア、久保田ふみえさんと伊藤麻紀さん。以前から個人的に捨てられた犬を保護する活動をしてきましたが、市の譲渡ボランティアに登録したことで、他の団体とのつながりができたと話します。 「私たちが飼い主の募集をする際には他団体のサイトにも情報を掲載してもらい、逆に他の団体から私たちが犬のしつけなどについて相談を受けることもあります。交流会を通じて団体同士が互いの得意、不得意を知って、連絡しやすい関係ができています」 センターでは2016年度に初めて犬の殺処分ゼロを達成しました。翌年には瀕死の状態で引き取った犬など4頭が収容中に死亡しましたが、30年前の開設当初には年間6000頭近い犬を殺処分していたことを考えると大きな変化です。 愛護企画係長の島崎亜紀さんは「今も犬舎は常に満杯の状態。昨年も今年も殺処分の再開を危惧したことが何度もありました。それでも殺処分をしないでいられるのはボランティアの皆さんの頑張りによるところが大きい」と話します。 島崎さんたちには、もう一つの支えがあります。それは「ふるさと納税」です。 以前は収容動物の増加に対して、予算が常に不足していることが悩みでした。飼い主さえ見つかれば生きられる犬を処分するのも忍びなく、センターの職員が自費でフードを購入することもあったそうです。 「予算の増額を求めたくても市の財源に限りがあることは重々分かっていたので、強く言いづらい面もありました」と島崎さん。 そこで考えられた仕組みが、16年度から始まった「犬殺処分ゼロサポート寄付金」です。ふるさと納税の制度を使って、殺処分ゼロを目指す活動への支援をアピール。趣旨に賛同する人からの寄付は16年度に約1100万円、17年度には対象を猫にも広げて「目指せ殺処分ゼロ!犬猫サポート寄付金」とし、2500万円以上が集まりました。寄付金はセンターで使う薬やシートなど消耗品のほか、手術や検査の機器、広場の整備などに充てられています。