石川県の名店を大阪で。「喫茶 水鯨(すいげい)」(大阪・阿波座)は50年の歴史を語り継ぐ。
「日本の喫茶文化」を次の世代へ受け継いでいきたい
お店の奥にあるカウンターキッチン。コーヒーを淹れる瞬間が見れますかくして「喫茶 水鯨(すいげい)」をオープンした山口さんご夫妻。しかし、喫茶店経営がゴールではないのだとか。営業をしながら、自身が喫茶店を継承したノウハウを活かして、喫茶店文化を守る活動に取り組んでいるそうです。「僕たちのように、喫茶店を受け継ぎたい人と後継者を探しているお店さんを繋いだり、閉店してしまうお店さんの内装品を“レスキュー”したり。喫茶経営のノウハウを伝えるとか、そういった活動をしています」家具やキッチン機材の廃棄処分にもそれなりに費用がかかるため、山口さんが引き取って倉庫に保管することがあるそうです。今では作れないような凝った家具を、いずれ必要な人に受け渡せるようにしたいのだとか。ちなみに、その活動のために「日本喫茶文化協会」を設立。山口さんは代表を務めています。活動は無償で行っているとのこと。「開業費にあまりお金をかけられない方が多いんです。だけど想いというか、夢があるじゃないですか。そこで僕たちが仲介料を取ると、夢を邪魔してしまうかもしれません。うまく進む話も進まなくなるかもしれない」喫茶店文化に貢献したいという気持ちだけで、今は活動を続けているそうです。何かできることはありますか? と聞くと「近所の閉店情報を知ったら連絡ください」とのことでした。店の奥扉を出ると喫煙スペースがあります。店内は禁煙です山口さんは現在35歳(2024年12月現在)。喫茶店にハマったのは20代だと言いますが、今時の若者をそこまで魅了させる喫茶文化の魅力とは何なのでしょうか? 「僕が感じるレトロ喫茶の魅力は、やっぱり昔の職人さんが作った調度品です。例えばこの椅子の手すり部分の湾曲したデザインとか…正直作るのは手間だろうし、機能的に無くても困らないものです。カウンターにも肘置きがあるんですけど、そういったちょっとしたデザイン性が、個性的で味があるんですよね」禁煙室から受け継いだ赤い椅子。確かに変わったデザインです今はほとんど見ない? カウンターの肘置き九谷焼がぶら下がるデザインのランプ。ヤニだらけだったシェードは綺麗に張り替えたそうステンドグラス風の大きな窓。差し込む光がとても綺麗に反射します50代・60代の昭和世代から見れば懐かしく、10代・20代のZ世代からすれば斬新なデザインの昭和レトロ喫茶。「禁煙室」から受け継がれてきた内装は、色んな色を使っているのに、なぜか統一感があり、独自の世界観があります。「レトロ喫茶風にすることはできると思います。でも、歴史や思い出までは真似できません。近所の方の憩いの場所というものをずっと残したいですし、色んな人が気軽に立ち寄れる場所であり続ける。それが僕が好きな日本喫茶の姿です」