頭痛・嘔吐が続き…医師「10年生存率0%、中央生存値が1年」 自分らしく生きぬいた少女の意志を父親が継ぐ
春香さんを支えたもの
小学6年生で脳腫瘍を発症した春香さんは、中学3年間は学校に通えない日も多く、高校には入学しましたが本人の希望により、1年で通信制高校に転校しました。 つらく思えた学生時代ですが、春香さんには絵を描くという生きがいがあり、作品の中にはコンクールに入選した作品もあります。 「普通の中高生とは違う青春時代を過ごすことによって、春香なりにつらい思いや悲しい思いをたくさん経験したと思いますが、大好きな絵を描くことによって、春香は自分自身と向き合い表現し、自信を取り戻していったようです」 坂野さんの自宅には、春香さんが描いたたくさんの絵が飾られています。 「苦悩の闘病生活でも、春香は好きなものを見つけ、家族に愛され、生きる喜びを全身で感じていました」と坂野さんは話してくれました。
人の役に立ちたい
術後の後遺症により、利き手の右手が動かなくなった春香さんは、左手を使って絵を描いたり、話をしたりすることで家族に思いを表現していました。しかし、最も恐れてたいた脳腫瘍の再々発により、それも難しくなってしまいます。 「身体が思うように動かなくなると、自分の思いを伝えることが難しくなっていきました。それでも、亡くなる数日前の言葉が発せられなくなるまで『人の心に何かを刻みたい』『人の役に立ちたい』と言っていました」 春香さんが亡くなる1ヶ月前に描かれた『✕くん』という絵本。 この本は、みんなから疎まれ自己肯定感が低くなった✕くんが、ある女の子の「✕はせいこうのもと、✕くん、ありがとう」という一言により、自分の存在価値に気づき、成長していく物語です。 この絵本の中に、春香さんの人生観が詰まっていると坂野さんは話します。 「どんな人にも、存在価値はあるんだよ。自分らしく生きていいんだよ。というメッセージが込められているように思います」
春香さんの思いと共に
春香さんが亡くなって約4年が経った今、坂野さん夫婦は、闘病を本『春の香り』(文芸社)に綴り、SNSや講演活動を通して春香さんが残したメッセージを伝え続けています。 「春香の思いを1人でも多くの人に伝えたい」 その気持ちを原動力に講演活動をしているといいます。両親はどんなときも「春香さんと一緒に活動している」そのように語ってくれました。 「春香の生きた軌跡を伝えていくなかで『前向きに生きていきたい』『生きる意味を考えさせられました』『自分は自分でいいんだ』と感想を伝えてくれる方も多く、春香のメッセージが人々に伝わっていると実感しています」 今後も「春香の意思を継ぎ、病気を抱えている子、不登校の子、生きる意味に疑問を持つ子、生きる目的が分からない子、他人と比較されて苦しんでいる子、悩んでいる子、そのお父さんお母さん、先生たち、1人でも多くの方に聞いていただき、春香からの『自分らしく』というメッセージを伝え続けたい」と坂野さんは話します。 18年という人生を懸命に生き、その姿をもって私たちに生きる勇気を与えてくれる春香さん。春香さんの強い思いがたくさんの人に広がっていき、自分らしく生きたいと前を向くきっかけになればと思います。
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