思わずウルッときたドリスのいない「ドリス」、「ザ・ロウ」と「クレージュ」でミニマルについて考える 2025年春夏パリコレ日記Vol.2
村上要「WWDJAPAN」編集長:ビニールジャケットのリバイバルからまだ数年しか経過していないけれど、あっという間にモードの世界で再び存在感を確立した感がありますよね。思うにサヴォアフェール(長い歴史の中で培った独自の審美眼)やクラフツマンシップではラグジュアリー・ブランドと勝負できないから、極限までミニマルな、でも、意味をたくさん詰め込んだ洋服を生み出し、結果“頑張れば買える“価格帯で商品が提供できているから、買うものに対して自分なりの理由がほしい若い世代の支持を得ているように思います。昔はラグジュアリー・ストリートも同じような考え方でクリエイションしていたけれど、気づけばどんどん華美になってしまいました。そんな中「クレージュ」は、もちろん最終的な洋服からニコラスの考えを感じ取ることはできないことも多いけれど、諦めずにいろんな意味で、哲学を盛り込んでいる。なのに超ミニマル。「クレージュ」の熱狂を体感するたび、ラグジュアリー・ストリートが失ってしまったものを考えることがしばしばです。
個人的には、後半のドレスにセンスを感じました。藪野さんがいう通り、本当に1枚の布、大きなクレープ生地を斜めに裁断した後、ラップドレスのように体に巻き付けてあるだけなんだれど、すごく斬新かつ美しく見えました。
「デルヴォー」には、ボタン1つで色が変わるバッグも
お次の「デルヴォー(DELVAUX)」は、前回“出し惜しみ“した分、今回は“出し切った“感がありますね。あんなにいっぱい見せちゃって、半年後大丈夫なのかしら(笑)?同じベルギー出身のルネ・マグリット(Rene Magritte)に敬意を表したコレクションでは、パイプの下に「これはパイプではない」という文字を入れた“パイプの裏切り“という作品を細かなステッチワークで表現。“パン トイ“は、大中小の3サイズがマトリョーシカのように1つになっていて、取り外せるけれど、3個セットじゃないと買えないとか(笑)。アール・ヌーヴォーの世界では、レザーでペタル(花弁)を作り、それでバッグを覆い尽くして芍薬のように見せました。