映画『ふれる。』長井龍雪監督&清水Pが語る、『あの花』『ここさけ』『空青』以降の新境地
秩父から高田馬場へ。舞台が変化した理由と秩父の「ちょうど良さ」
─『ふれる。』では秩父から飛び出して高田馬場を中心にストーリーが展開しますが、どのような経緯で舞台が決まったのでしょうか? 長井:前の作品で秩父は一回区切ろうというのはもともとありました。そういう意味で『空青』は秩父を肯定しつつ、秩父を出ていく人たちの話だったので、次は秩父からどこへ行くか、上京だねという話になりました。 高田馬場になったのは、学生街でもあるという位置づけの部分と、自分が上京した友達を訪ねて初めて東京に来たときに、その友達が西武新宿線の沿線に住んでいて、高田馬場に寄ったんですよね。その印象も頭の中にあったのかなと思います。 ─秩父は聖地巡礼の定番スポットになりましたが、『あの花』制作時や今作では意識されたのでしょうか? 長井:『あの花』のときは全然意識してないどころか、そんなに早く特定されると思わず秩父の市役所の方に慌てて連絡しました。最初は戸惑いのほうが大きかったですが、秩父市さんが受け入れて対話してくださり、それ以降の良い関係をつくれたのでよかったです。 ─今後は高田馬場にとどまらず、いろいろな場所が舞台になるのでしょうか? 長井:その予定です。むしろ秩父が舞台の作品をこんなにつくるとは思わなかったです(笑)。 清水:『あの花』の次の作品は別の場所でという話もあったのですが、長井監督がコンテとかシナリオに落とし込んだときに、主人公たちの動きの流れがどうしても想像できないと。秩父だとやっぱりわかるからということで、舞台を秩父に戻しました。ただ、秩父の方も喜んでくださったので逆によかったと思います。 長井:秩父はサイズ感がちょうど良いんです。街の中心が明確にあって、そこから放射状に街が広がっていき、盆地なので山で囲まれていて、箱庭感がすごくアニメに落とし込みやすいんだと思います。あとは当時『あの花』のおかげでイベントに呼んでいただいて秩父に行く機会が多くて、自分のなかで土地勘が出来上がってきたのもありますね。