映画『ふれる。』長井龍雪監督&清水Pが語る、『あの花』『ここさけ』『空青』以降の新境地
『ここさけ』で感じた劇場オリジナルアニメの難しさ
─『ここさけ』『空青』はオリジナル映画として公開されていて、アニメシリーズとはまた違った苦労があったと思います。 長井:尺の使い方ですね。テレビシリーズで毎週積み上げていってストーリーをつくるのと、1本で見せきらなくちゃいけない映画の時間感覚の違いは大きいと思います。 『ここさけ』はめちゃめちゃ苦労しました。尺をすごい飛び出して、すごい切りましたね。テレビアニメはどんどん要素を詰め込んで流れをつくる発想で制作するので、それを映画でもやろうとして苦労しました。野球あり、ミュージカルありと当時やりたかったこと全部盛りみたいな感じだったので、最終的な引き算の仕方の難しさが大変だったと思います。 ─ビジネス的にはテレビと劇場でどんな違いがあったのでしょうか? 清水:テレビアニメは原作の漫画が売れていたり、キャラクターにファンがいたりする前提で映像化することも多いですが、劇場オリジナルアニメの場合はまったく知らないキャラクターを皆さんに見ていただくので、最大でも2時間くらいの作品で感情移入できるのかとか、グッズが欲しくなるかとか、クリエイティブも宣伝も含めてすごく難しいと思います。 そのあたりは長井監督と岡田さん、田中さんの三位一体の関係性が非常によくできているんだと思います。 ─長井監督の作品では、音楽と風景のみのシーンに尺が使われているのも印象的です。間の取り方などにこだわりはありますか? 長井:こだわりというより、観ている人たちのリズムを刻まなくちゃいけないと思っています。ずっと爆音で音楽を聴くと疲れますし、ある程度休符を打たないと楽しく最後まで見切ることができなくなってくるので、意識的に文章的な点を打つことはしています。 清水:それがお上手なんですよね。シナリオには書かれていない部分での監督のセンスというか、演出力というか……そこが僕はすごく好きです。映画っぽいですよね。