重度難聴の息子。生後10カ月で受けた人工内耳手術は5時間にも及び、3歳の今は話せるように。音のある世界とない世界を使い分けて【体験談】
会話するのが楽しい!気持ちを育みたい
人工内耳手術をしてから、糸優くんがきいて話す力を伸ばすことに注力してきた美砂江さん。今後は手話を学ぶことも考えているそうです。 「わが家は今まで、聴覚活用して音声で言葉を獲得することに重点を置いてきました。決して手話を使いたくないわけではありません。むしろ息子は音声で100%きき取ることは難しいから、手話を併用することでよりよいコミュニケーションができたらいいと思っています。かなりきくことが身についてきたので、これから先は少しずつ手話を学び始める準備をしようかと考えています。 大切なのはコミュニケーションを楽しめることだと思うんです。その手段が、音声言語でも、筆談でも、手話でも相手と心を通わせることができたら、息子の人生はさらに豊かなものになっていくと思います。だから今はコミュニケーションが楽しい!会話するのが楽しい!という気持ちを育んでいきたいなと思っています。どんどんいろんなことに挑戦して世界を広げていってほしいです」(美砂江さん) その上で美砂江さんは、糸優くん自身が自分の障害特性を理解し、困りごとを伝えられるように育てたいと考えています。 「私たちが親としてできることは、何か困ったことがあったときに自分で説明できる子に育てることです。聴覚障害は治すことができる病気ではないので、自分の障害特性をよく理解することも大切だと思っています。自分のことをよく知った上で『僕は今こんなことに困っている』『こうしてもらえると助かる』と自分の言葉で伝えられるように育てていきたいなと思っています。 また、相手の方に難聴だということを知ってもらうこと、気づいてもらうことも大事だと思うので息子の人工内耳はあえて目立つ色にしています。かっこいい柄にしたりしているので、よく子どもたちにそれなにつけてるの? と聞かれることがあるので、そんなときはチャーンス!と思って、難聴のことや人工内耳のことを簡単にわかりやすく伝えるようにしています」(美砂江さん) お話・写真提供/美砂江さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部 人工内耳の機器は片耳約100万円と非常に高額です。故障の場合は1割負担のことが多いようですが、紛失は自己負担で支払う必要があるのだとか。補助金は自治体によって差があるため、美砂江さんは「人工内耳や補聴器は難聴の方にとって体の一部なので、日本全国どこにいても平等に補助や支援が受けられるようになってほしい」と言います。 「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。 ■Lelien(ルリアン) https://lelien2024.studio.site/ ■Lelien(ルリアン)のInstagram https://www.instagram.com/lelien2024.mm/ ●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。 ●記事の内容は2024年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
たまひよ ONLINE編集部
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