親が加入している保険証書の情報を家族で共有しておく【親を要介護にさせたくない】
【親を要介護にさせたくない】#22 前回、介護費用の支払いや後の相続を想定し、親名義の預貯金や株について把握することに触れた。イザという時、すぐに引き出すことのできる現金の存在はとても大きいからだ。しかし、これだけで安心するのは早い。介護費用の補填やもっと先のことを想定した他の資産についても、家族で共有することが大切だ。 認知症に備え「エンディングノート」に記入しておくべき内容は? 多くの人が加入しているであろう医療保険は、入院や手術、通院の給付が設定されている。その掛け金が高いほど、まとまったお金として戻ってくる。 たとえば、筆者の知人の家では、85歳の母親が骨折で約1カ月入院した後、回復期リハビリテーション病棟に3カ月入院。その4カ月分の入院医療費総額が約45万円になったが、1日当たり1万2000円の入院給付により約150万円を受け取ることができた。 つまり差し引き100万円浮いたわけだが、知人はそんな保険に入っていることを知らず、念のためにと入院中の母親に尋ねたら「そういえば……」と教えられたとのこと。そこで慌てて保険会社に必要な書類を確認し、無事手続きをすることができた。 このような給付金の請求は3年前まで遡れるものの、早く動くほど労力は少なくて済む。しっかり確認し、書類の準備や作成は子供がフォローしよう。 契約者(親)が死亡した時に保険金が受け取れる終身(生命)保険の存在も改めて確認すべきもののひとつだ。受取人の名義が誰なのか。おそらく子供の名になっているはずだが、自分の名前があれば、今後の保険会社への問い合わせがスムーズにできるよう「家族登録」をしておくこともお勧めする。それをしておけば、契約内容についての問い合わせや手続き書類の送付依頼を契約者に代わってできるからだ。 このように、高齢の親に介護の影が忍び寄ってきた時、加入している保険証書を一つ一つ確認し、情報を共有することはとても重要なことだ。それまで払ってきた保険料や、子供のために残そうとしてくれた気持ちを無駄にしないためにも、早いうちに取り組みたい。 なお、重要な証書類を貸金庫に預けている場合、家族が出し入れするには「代理人登録」をする必要がある。しかも、その手続きには契約者の同席が必要なので、病院や施設などに入所し自由に出入りできなかったり、認知症が進んだ場合、とてもやっかいなことになってしまう。何事も親が元気なうちに始めるのが吉といえよう。 (西内義雄/医療・保健ジャーナリスト)