プロ8年目で開花。楽天・藤平尚真投手、苦しい時期を乗り越え再起する原点とは
高校3年でようやく才能が開花
ようやくその才能が開花し始めたのは最終学年になってからだ。 印象に残っているのは3年春の県大会、東海大相模戦でのピッチングである。 4回に味方のエラーをきっかけに2点を失い、8回には3番打者の山田啓太(現・JFE東日本)にツーランを浴びたものの、7回1/3を投げて自責点2と好投。チームも延長の末にライバルを下した。 この時のノートには秋からの成長が感じられたことが記されている。 「上半身も下半身も全体的に体つきが一回り大きくなり、フォームの安定感もアップした。秋とは腕の振りもボールの勢いも格段に向上している。 ほとんど外角というのは気になるが、ストレートはコンスタントに140キロを超え、手元での勢いも申し分ない。縦、横2種類のスライダーも腕を振って投げられており、特に横に変化するボールは右打者が腰を引くほど。 (中略) 軸足の膝が折れるのが早いのはどうしても気になり、中盤にスピードが落ちるスタミナは課題。それでも冬から春にかけての成長は十分」 続く3年夏にはようやく自身初となる甲子園にも出場。初戦の東北高校戦では立ち上がりからいきなり5者連続三振を奪い、6回2/3を投げて13奪三振、1失点という快投を見せている。 この頃にはドラフト1位候補という評価は万全のものとなっていた。ちなみにこの年は他にも今井達也(作新学院→西武)、寺島成輝(履正社→ヤクルト)など高校生投手に好素材が多かったが、楽天の球団関係者からは星野仙一シニアアドバイザー(当時)から「200勝できる可能性がある投手」というオーダーで藤平を選んだという。 冒頭でも触れたように、プロでもなかなか結果を残すことができなかったが、高校時代に苦しんだ経験が活かされているのではないだろうか。 2024年シーズンとプレミア12で見せたピッチングは間違いなくプロでもトップクラスのものだっただけに、2025年以降もさらなる進化を遂げてチームを牽引する活躍を見せてくれることを期待したい。
TEXT=西尾典文