AI研究第一人者に聞く 生成AIブームの光と影【WBS】
いま世界的にAI(人工知能)の活用が広がっていますが、肥大化する投資などへの懸念も高まっています。これにより社会や企業のAIへの期待に変化はあるのでしょうか。来日したAI研究の第一人者に聞きました。 【動画】AIの安全性確保へ法規制など議論する有識者会議が初会合 岸田総理「世界をリードするような議論を」 グーグルのクラウド部門が主催した展示会「Google Cloud Next Tokyo '24」。メインテーマは生成AIで、2日間で約1万人が来場しました。 あるブースで展示されていたのはゴルフのプレーに生成AIを活用した技術。パットする映像をグーグルの生成AI「Gemini」で分析。映像からボールの軌道を割り出し、プレーに合わせた実況を自動で生成します。スポーツやゲームなど様々な動画に活用できるといいます。 グーグル・クラウド・ジャパンの平手智行代表は「150を超えるブースやセッションがあり、既に動いている事例を討議している。AIが試す段階から使う段階に移っていると確信している」と話します。 生成AIの活用は今後も広がり続けるのでしょうか? 先週来日したのが、生成AIの研究を世界的にリードしてきたアメリカ・スタンフォード大学兼任教授のアンドリュー・ング氏。グーグルやバイドゥでAI研究を主導してきました。今回テレビ東京のインタビューに応じました。 「AIの進化速度は予想と比べてどうか。期待以上か」(鵜飼祥記者) 「AI技術は急速に進化している。AIを使ったアプリがどんどん誕生する。この状況に興奮している。ハードウェアやディープテックなどで日本は高い技術基盤を持ち、AIを活用できる産業も多い。日本は将来AI分野をけん引する可能性が非常に高い」(アンドリュー・ング氏) その一方、AIがもたらすリスクも日々拡大しています。3日、政府が初めて開いたのがAIの法規制を含めた対策を検討する有識者会議です。AIはフェイク動画などを簡単に作れるため、人権侵害や偽情報の拡散といった悪用への懸念が高まることへの対策を進めようとしています。 「動画生成AIが社会にとって危険すぎるとは思わないが、動画生成AIには問題もある。問題を減らす方法を考えるべきだ」(アンドリュー・ング氏) また、生成AIは企業にとっても新たな懸念を生んでいます。AI設備投資が肥大化しているのです。グーグルの親会社アルファベットは4~6月期の決算で、AIの稼働に欠かせないデータセンターなどを増強するため、前の年の倍近い130億ドル(約1兆9000億円)を投じたと発表。今後も同等かそれ以上の規模を投資していく見通しを示しました。 一方、アップルも1日、ティム・クックCEOが「アップルインテリジェンス(アップルの生成AI)の並外れた可能性を信じている。今後も多額の投資を行う」と発言しています。 ただ、各社とも巨額の投資に見合うだけの収益を見いだせるかいまだ見通せず、アマゾンはデータセンターなどの投資がかさむとの見方が広がり、決算発表後の取引で一時10%下げました。 企業の巨額のAI投資は今後報われるのでしょうか。 「AIビジネスは長い目でみれば、投資は将来必ず報われる。AIで自動化できる仕事の数がとても多いからだ。経済の大部分がAIで大きく成長する。だが、ここ数年AIの設備投資額が膨大なことが課題だ。設備投資が報われるまでの時間は注視すべきだ」(アンドリュー・ング氏) ※ワールドビジネスサテライト