【中国軍機による領空侵犯の狙い】日本は撃墜できるのか?2度と起こさせないための課題
中国軍のY9情報収集機が8月26日午前、長崎県男女群島付近の日本領空を約2分間にわたって侵犯した。中国軍機が日本の領空を侵犯したのは初めてで、「我が国の主権の重大な侵害で、全く受け入れられない」と強く非難する政府に対し、中国政府は「いかなる国の領空も侵犯する意図はない」「過度な解釈をしないように」などあいまいな表現を繰り返している。なめられたものだが、中国の態度がいかに不遜で傲慢であるか、それをしっかりと認識するには、まず航空自衛隊が実施する緊急発進時の行動を知っておく必要がある。
警告を無視する中国軍機に対して
筆者は2010年4月、記者として初めて、緊急発進(スクランブル)して領空侵犯を阻止する訓練に参加、実際に空自のF15戦闘機の後部座席に搭乗し、取材したことがある。その時の訓練内容に基づき、今回の状況を再現してみたい。 空自は8月26日午前10時30分ごろ、中国軍機(Y9)が九州西方の上空に設定した日本の防空識別圏に侵入したのを確認、直ちに福岡・築城基地からF2戦闘機2機が緊急発進、日本の領空に近づかないよう警告を発した。 そのやり方は、まず1機のF2が中国軍機に接近、「直ちに機首を西に向けなさい」と英語と中国語で警告する。次に、無線通信を無視し飛行を続ける中国軍機の操縦士に、F2の翼下に搭載した対空ミサイルを視認させるため、機体を急接近させたはずだ。 翼と翼がぶつかるのでは、と怖さを感じるほどの距離で、相手機の操縦士の顔がはっきり見え、訓練でも緊張したことを覚えている。今回の場合、戦闘機の空自機に対し、中国軍機は速度の遅いプロペラ機のため、2機のF2は中国軍機の周りを旋回しながら交代で同様の行動を繰り返したと思われる。 空自はF2の燃料切れに備え、宮崎・新田原基地から2機のF15戦闘機も緊急発進させた。だが、警告を無視する中国軍機は、男女群島東方沖の上空で長方形をなぞるように周回を開始、直後の午前11時29分から2分間、同群島沖22キロの領空を侵犯した。領空から離れた後も、中国軍機は同群島の南東沖で周回を続け、午後1時15分、機首を西に向け大陸方向に飛び去った。 空自機の行動からわかるように、中国軍機は何度も空自機から無線で警告を受け、翼下のミサイルまで見せつけられながら飛行し続けている。中国軍機は「北斗」と呼ばれる独自の衛星測位システム(GPS)で飛行しており、今回の領空侵犯は操縦士による明らかな故意であり、操縦ミスの可能性はないだろう。