受刑者手織り「ミュシャ」…堺の伝統技法で幻のじゅうたん再現
堺市堺区の大阪刑務所で、受刑者が江戸時代から伝わる織物技術「堺 手織緞通ておりだんつう 」を用い、欧米などで活躍したアール・ヌーボーを代表する芸術家アルフォンス・ミュシャ(1860~1939年)の油彩画を模したじゅうたんを制作した。 縦211.4センチ、横195センチで、ミュシャが描いた油彩画「クオ・ヴァディス」(1904年制作)とほぼ同じ大きさ。
油彩画を所蔵する堺市立文化館「堺アルフォンス・ミュシャ館」によると、1910年頃にミュシャのビジネスパートナーが米国内にじゅうたん工場をつくる際、最初の絵柄として採用されるはずだったという。しかし、計画は立ち消えとなり、油彩画も一時行方不明に。後に「カメラのドイ」の創業者でミュシャコレクターの土居君雄氏(故人)が入手し、遺族が市に寄贈した。
来春特別展で公開
同館は2021年、約110年前に企画された「幻のじゅうたん」を再現しようと、受刑者の職業訓練の一環で堺手織緞通に取り組む同刑務所に制作を依頼した。制作費など約520万円はクラウドファンディングで賄ったという。 堺手織緞通は縦糸に木綿、横糸と刺しゅうに羊毛を使う敷物作りの技法。技術を学んだ受刑者2人が何色もの羊毛を合わせて織機で丁寧に織り込み、油彩画独特のグラデーションを表現した。指導した同刑務所の眞野敏夫・作業専門官は「細々とだが伝統を継承しており、高い技術力を知ってもらえれば」と話している。 同館は来年4月20日から、特別展で油彩画とともに公開する予定。