【ラグビー】部員一人でも参加OK。「楽しい」を追求した高校リーグ。2019年創設「スーパー・エンジョイ・リーグ」
「今日は『スーパー・エンジョイ・リーグ』ですから、気楽ですよ。全部、選手に任せてます」 試合を見守っていた指導者の一人は、くだけた笑顔でそう話した。 選手がプレーを楽しんでいる様子が、手に取るように伝わってくる。見守る指導者の目も、穏やかに試合を追いかけている。 どこの会場にもありそうで、どこにでもあるわけではない、ストレスフリーの幸福感がそこには広がっていた。 スーパー・エンジョイ・リーグ(SEL)。 板橋有徳高校ラグビー部(東京)で顧問を務める本村雄(もとむら・ゆう)先生が、都立東高時代に提唱し、合同練習をしていたチームの顧問・コーチと相談しながら、2019年春にスタートした有志リーグだ。 高校チームであれば単独・合同問わず参加可能。部員一人のチームでも参加できる。また、自分の好きなポジションでプレーできるなど、強化とあわせて「楽しむ」ことを大きな目的としている。 創設時に意識していたのは、関東高校強豪の強化と相互交流を目的に2002年に創設された「関東スーパーリーグ」や、続く東日本強豪で2015年に創設された「ブレイブハートリーグ」だった。 SELも当初は強化中心のコンセプトも検討していたが、「誰でも」「楽しく」に変化していった。 「当初は『弱いチームが強くなってもいいのでは』という思いもありましたが、『SELに来れば、どんなチームでも試合が楽しめるコミュニティを創ろう』と変わっていきました」(板橋有徳、本村先生) いまSELでは、どんなチームもエンジョイできる工夫を凝らしている。 試合時間は1本15~20分。前後半をなくし、参加チームの試合数を増やした。 8月24日に千葉・東京学館浦安で開催されたSELでは、参加5校(東京学館浦安、板橋有徳、豊多摩、東海大高輪台、千葉北)による各チーム20分×3本、そして2本の1年生試合が行われた。 東京学館浦安高校(千葉)で顧問を務める山田伸太郎先生は、複数チームとの20分試合は経験値になると話した。 「接点のなかったいろんなタイプのチームとたくさん試合ができるので、良い経験になりますよね。生徒たちも楽しんでいて、SELがあると聞くと『イェーイ!』と喜んでますよ(笑)」 60分フルの試合でしか強化できない領域があることは、承知の上。しかしそれでは参加校の待ち時間が長くなり、過酷さも増してくる。 初心者が多い少人数校と強豪校では生徒のモチベーションも違う。強化一辺倒で進むと「せっかくラグビーを始めてくれた子がラグビーを嫌いになったり、離れていってしまうかもしれないと思っています」(本村先生)。多様なチームとの短い試合で、生徒の“楽しい”を担保している。