【ラグビー】部員一人でも参加OK。「楽しい」を追求した高校リーグ。2019年創設「スーパー・エンジョイ・リーグ」
生徒たちが喜ぶ理由のひとつに、SELが指導者に自制を求めている点も挙げられるだろう。 SELでは、指導者の怒気をはらんだ指示がほとんど見られない。 「SELでは、指導者がガミガミと指示を出すのではなく、生徒たちが主体的に考える環境を作ることを目指しています。以前は怒る監督もいらっしゃいましたが、そのときは『今日は怒ってはダメな日ですよ~』という感じで声を掛けていました」(本村先生) 趣旨に賛同する約90名の先生たちによる参加するLINEグループにおいても、「選手が主体的に考える試合を」といったコンセプトを確認できるようになっている。 「僕もついガミガミ言ってしまうタイプなんですけどね」と冗談めかして明かしたのは、創設者である当の本村先生だ。 本村先生も以前は強権的な指導者だった。 変化のきっかけは、生徒たちの反抗だった。 「以前、3年生が僕に反発して、13人中7人が様々な理由や言い訳を作って合宿に来なかったことがありました」(本村先生) 優越的な立場にある指導者に対し、選手が集団で反抗する――。合宿不参加の生徒たちに相当な不満、覚悟があったことは想像にかたくない。 「当時の僕は彼らに『強くなりたいよな?』と押しつけていました。そのとき、結局は自分が強くしたかっただけなんだなと思ったんです。そこから『チームを強くする監督になりたい』という思いは捨てて、生徒たちの思いが一番大切、という考えに変わっていくことができました」 「あの時の経験がなければ、SELも今の自分の考え方もなかったかもしれません。彼らには申し訳ないという思いと、気づかせてくれたことに、今では感謝しています」(本村先生) 50歳の本村先生は暴力・暴言が黙認されがちだった時代にラグビーを経験しているが、本村先生いわく「問題が起きた時に良くも悪くも『自分が悪かったのかな』と考えてしまうタイプ」。自分に向けたベクトルから、時代に適応する思考の変化が始まった。