15年ぶり「代表交代」でどうなる「公明党」 解散総選挙になっても「池田先生の“弔い選挙”。今ならやれる」と手ごたえ
池田大作氏死去の影響
一方で公明党は、“ポスト池田”期における自らの集票能力がどうなっているのかについても、慎重な検証を行っていたようだ。池田氏死後に行われた大きな選挙には、まず今年4月28日に行われた衆院東京15区の補欠選挙があった。 「この選挙で公明党は当初、タレントの乙武洋匡候補を支援しようとした。しかし、乙武氏側が政党からの支持を一切断るなどの姿勢を見せたため、公明党の対応も二転三転。それでも公明党・創価学会の組織は割と堅調に動いていた。乙武氏は落選してしまったが、出口調査で公明支持層の50%超は乙武氏に投票していたとの数字が出ていた。池田先生死去のショックは、そこまで大きな影響を現場にもたらしてはいないのではとの見通しが出てきた」(ある創価学会関係者) 続いて今年7月の東京都知事選挙では、公明党は現職の小池百合子氏を支援。これも小池氏が政党からの推薦を求めなかったため、公明党は小池氏の“ステルス支援”に徹することになるのだが、「『私たちのがんばりを小池さんに見てもらおう!』と、現場の熱気はすごかった」(同前)という。実際、この都知事選で公明支持層は、約80%が小池氏に投票したとの出口調査結果も出ている。 池田大作氏が死去したとはいっても、彼はここ十数年、まったく公の場に姿を見せてはおらず、その肉声も伝えられてはいなかった。“池田氏の死去”は少なくとも表面上、創価学会の活動に特に大きな変化を与えてはいないと言っても過言ではなく、会員たちの活動量がガクンと減っているような事実もあまり観測できないというのが、筆者の取材活動を通じての、偽らざる実感だ。この状況を踏まえて、創価学会・公明党側も“秋の解散総選挙”に向けたシフトを強力に進めたのだと思われる。
重要なのは“次の次”
その象徴が、7月の都知事選と同時に行われた、東京都議会議員補欠選挙だった。 この都議補選において公明党は、自民候補への推薦を出さず、自主投票とすることを決定。その結果、自民はこの補選で2勝6敗と惨敗した。 「そもそも今の創価学会は高齢化が激しく、大型の選挙を立て続けに戦う“体力”がない。小池百合子はある意味、放っておいても知事に当選する人で、支援もそこまで大変ではなかったが、都議補選で自民党まで推すとなると、労力は大変なことになる」(前出の古参学会員) つまり、創価学会・公明党は秋の解散総選挙を見越して、都議補選においてはフル回転をしなかったのである。また、常勝関西を脅かす存在だった維新も、大阪万博の開催計画が不安視されていることや、選挙で支援した斎藤元彦・兵庫県知事のスキャンダルなどによって、最近その勢いに陰りが見える。秋の解散総選挙に関して、「今ならやれる」(ある公明党関係者)という空気感が、創価学会・公明党の間にあるのは事実らしい。 そして、自民党や立憲民主党のニューリーダー、またアメリカの新大統領まで現れる、“刷新感”あふれるこの秋に、公明党も新代表をぶつけて、解散総選挙を戦うつもりなのだろう。意外にも池田大作氏亡き後の創価学会・公明党には、悲壮な空気は漂っていない。 「実際、次の総選挙を池田先生の“弔い選挙”と位置づけ、がんばりたいと話す会員はそこそこいる。ある程度、いい勝ち方もできるんじゃないのか。しかし、“弔い選挙”などというものは、2回、3回とやるようなものではない。本当に重要なのは“次の次”だろう」(前出の学会関係者) 公明党の新代表になる石井啓一氏は、元建設官僚。「優秀な人物だが、よくも悪くも“お役人”っぽい堅さがあって、華がない」(前出の公明党関係者)との評はあるものの、それゆえに実力未知数でもある。石井体制は果たして公明党の“次の次”を、いい方向に導いていけるのか。 小川寛大(おがわかんだい) 宗教専門誌『宗教問題』編集長。1979年熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙『中外日報』記者を経て、2014年より『宗教問題』編集委員、15年に同誌編集長に就任。 デイリー新潮編集部
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