おひとりさまサポート会社代表が「老後のひとり暮らしを満喫する人」に見出した<ある共通点>とは。「孤独」と「孤立」の違いに要注意
◆孤独は適度に楽しみながら、孤立はしない (2)孤独は適度に楽しみながら、孤立はしない 『ムーミン』シリーズに登場するスナフキンをご存知でしょうか。 彼は孤独を愛しています。他人に干渉されることなく、自分の思うままに生きる。おひとりさまの達人です。 スナフキンのようなキャラクターは、他の作品でもときおり見られます。 孤独というのは人によっては価値のあるもので、彼らに憧れたり共感したりする人も少なくないということでしょう。 たしかに、人間関係はときに大きなストレスの原因になります。 大阪府門真市の医師・辻川覚志氏が60歳以上の484名にとった「同居より独居のほうが幸福度が高い」というアンケート調査も、それを裏付けています(『老後はひとり暮らしが幸せ』、水曜社)。 また私の友人の阿久津さんも「お互いに気を遣うくらいなら」と離婚しました。 ただし、注意しなければならないことがあります。 孤独と孤立は違うということです。 孤独は“感覚”であり、孤立は他者と切り離された“状態”です。 スナフキンは孤独が好きですが、友人であるムーミン一家との関わりは描かれています。 阿久津さんもゴルフ仲間や私のような友人がたくさんいます。 彼らはひとりの時間を大切にしながらも、決して孤立はしていないのです。 これは、老後ひとり暮らしの壁を越える大切なポイントになります。
◆社会的孤立に陥りやすい日本 実は、日本は社会的孤立に陥りやすい国です。 過去に行われた調査では、OECD諸国の中で、人付き合いが滅多にないと答えた人の割合がもっとも多かったのが日本でした(「Society at a Glance」2005年)。 これは、人との関わりがなくてもある程度は生活できるという、日本社会の成熟を示しているのかもしれません。 しかし歳をとれば、話し相手や相談相手、身元を保証してくれる人、日常生活の世話や介護を頼める人、死後の手続きを頼める人など、セーフティネットとして必要な人間関係というのが出てきます。 内田樹氏の著書に『ひとりでは生きられないのも芸のうち』(文藝春秋)というものがあります。 この本では「この人がいないと生きていけない」と思える人が増えることが成熟であると述べられています。 おひとりさまには「人に頼りたくない」「迷惑をかけたくない」と言う方が多いのですが、できないことは人にやってもらって当然ではないでしょうか。 ただし、自分ができることは積極的に人に提供する。それが共同体を支える相互扶助だと理解できます。 自立することは孤立することではありません。壁をうまく越える人は、ストレスにならない適度な人間関係を上手に築いています。 ※本稿は、『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』(アスコム)の一部を再編集したものです。
山村秀炯
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