山根元会長の“奈良判定”で奈良ボクシングジムが風評被害のとばっちり!?
プロボクシングのジムである「奈良ボクシングジム」がアマチュアボクシング界で大騒動となっている“奈良判定”の風評被害に悩んでいることが9日、明らかになった。日本ボクシングを再興する会が、JOC(日本オリンピック委員会)、スポーツ庁などに告発した日本ボクシング連盟、“ドン”山根明元会長(78)に関する数々の不正の中に“奈良判定”と言われる審判の不正問題がある。辞任を表明した山根元会長が独裁的な権力をかさに着て、奈良出身の選手を勝たせることを審判に強要していた問題で、再興する会は、先日、その決定的な証拠となる音声データを公開しているが、“奈良判定”に、まったく無関係の奈良ボクシングジムに抗議電話や迷惑電話などが殺到。しかも、騒動勃発以来、ジムへの新規入会者がゼロという洒落にならない風評被害を受けている。東京五輪参加への影響などが危惧されているが、この問題が、プロも含めたボクシング界全体の大きなイメージダウンにつながっていることは間違いない。
数日前にジムにこんな電話が入った。 「おい!山根がおるんやろ。電話口に出せ!」 “奈良判定”と呼ばれる審判不正を再興する会が告発。2016年の岩手国体で2度もダウンをとった岩手の選手が、判定で奈良の選手に敗れるという映像がテレビなどで繰り返し流され、“奈良判定”という言葉が独り歩きすることになった。奈良の大和西大寺駅近くにある奈良ボクシングジムは、2004 年にプロ加盟したジムでまだ世界王者、日本王者が誕生していないが、優れたスタッフを揃え地域に愛されているジムだ。 今回のアマチュアボクシング問題との関係は一切ないが、奈良県内にプロジムは、たったひとつだけ。アマチュアジムは2、3個あるが、ジム名に「奈良」と入っているのは、ここだけで、ヤフーの検索に奈良ボクシングジムと入力すると上位に「奈良ボクシングジム 山根」と、自動関連検索のワードが出てくる。詳しい事情のわからない人々にしてみれば、「奈良と名のつくジムなら山根元会長となんらかの関係がある諸悪の根源だろう」と思い込まれているのかもしれない。 ここ数日は、少し収まっているが、騒動が起きて以来、この手の迷惑電話が後をたたなかったという。 同ジムの谷口良知・会長(43)が“SOS”を発信する。 「本当に困っています。奈良ボクシングジムと奈良判定。もろかぶりでボクシングを詳しく知らない人に誤解されているのかもしれませんが、奈良判定や、日本ボクシング連盟とは、一切関係がありませんし、僕自身、山根会長との面識もないんですよ。なのに奈良判定への抗議などの迷惑電話がいっぱいジムにかかってきて、行くところ、行くところで、その話ばっかりです。ホームページで一切関係ないことを説明しようかと悩んでいるところなんですよ」 同ジムでは、日本ウェルター級10位の岡本和泰が、この11日に、大阪・枚方で行われる日本ウェルター級タイトルマッチで、同級王者、矢田良太(グリーンツダ)に挑戦する大きな試合を控えているだけに、なおさら抗議電話などの喧騒にふり回されたくないという。 先日、プロ加盟ジムの会長の集まりである日本プロボクシング協会も、日本ボクシング連盟と勘違いされ、抗議電話が殺到、業務が妨げられるほどになり、「アマチュアボクシングを統括する日本ボクシング連盟とは別組織であり、その運営や組織内部のことについてコメントする立場にはありません」との声明を発表したが、「同じような迷惑をこうむっています」と谷口会長は、悲鳴を上げる。 さらに切実な問題は、風評被害により新規入会者がゼロという現状。 昨年は8月の入会者が7人で、お盆前のこの時期にも2人の入会者がいた。同ジムは2008年に正式にプロ加盟したが、ここ数年をふりかえっても8月に、新規入会者がゼロという年はない。谷口会長は、「今回の様々な問題が、ボクシング界全体へ与えたイメージダウンの影響でしょうか」と頭を抱える。