6万人の警察官を動員したコロナ禍の東京五輪 警視庁150年 147/150
1964(昭和39)年の東京五輪以来、56年ぶりに首都・東京での開催が決まった2020東京五輪・パラリンピック。当時に比べ東京の人口は増加し、社会情勢も大きく変わる中、安全な大会運営には警視庁の力が欠かせなかった。 警視庁は平成26年1月、約6年半後の開催に向け、副総監を本部長とする「オリンピック・パラリンピック競技大会総合対策本部」を発足。要人警護や雑踏警備、交通規制、サイバー攻撃対策など体制を整えていたが、令和2年1月、最大の難敵が登場する。「新型コロナウイルス」だ。 延期となった1年後も新型コロナの脅威は衰えず、大会は異例の無観客開催。聖火リレーも都内では公道での走行がほぼ中止となった。 3年7月23日から8月8日までの五輪開催期間中、205の国・地域と難民選手団の計約1万1千人が参加。警視庁を中心に約6万人の警察官が動員され、長期間の警戒と広範囲に及ぶ会場、酷暑と感染対策という難題も加わった前例のない警備を成し遂げた。組織委員会などと入念な打ち合わせを重ねた結果、懸念されたサイバー攻撃も確認されなかった。 「警備のエキスパート」として、五輪・パラの警備対応を指揮した当時の斉藤実警視総監は退任の際、1年延期となったことで、入念に練ってきた警備計画の成果を見ずに退職や異動を余儀なくされた職員らがいたことにも触れ、感謝を述べた。(大渡美咲)