エヴェネプールがスタート前のチェーン脱落も史上初の五輪TT&世界選手権TTの同一年ダブル制覇の快挙【Cycle*2024 UCI世界選手権大会 男子エリート個人タイムトライアル:レビュー】
たしかに最終盤の平地区間で、ガンナが巨躯を活かし、凄まじい追い上げも仕掛けた。1分半前にスタートしたはずの前走者プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を、残り数百メートルで捕らえ、そのままフィニッシュラインへ向けスプリントを切ったほど。実際、第3計測からフィニッシュまでのラスト9.3kmだけなら、「ラスト5kmはリズムを保つのに苦労した」エヴェネプールより、ガンナのほうが約12秒速かった。 それでも、全体のトップタイムを意味するグリーンの表示は、常にエヴェネプールの名前の脇に灯り続けた。最後にはハンドルから両手を離して……まるでラインレースで独走勝利を祝っているかのように、ウィニングポーズをとる余裕さえあった。2位のガンナに6秒43差をつけ、フィニッシュラインに飛び込んだ。
「タイム差自体はどうでもよかった。ただ自分のタイムがグリーンだったから、祝いたい気分だった」(エヴェネプール)
自らの感覚だけでペダルを回し続けたエヴェネプールは、全長46.1kmを53分01秒98で走り切った。平均時速は52.156km。ジュニア時代の2018年大会も含めると3度目の個人TT世界制覇を達成し、昨年8月のグラスゴー大会で得たマイヨ・アルカンシェル着用権利を、さらに1年間延長した。また女子エリートのグレース・ブラウンと同じく、史上初の五輪TT&世界選手権TTの同一年ダブル制覇の快挙さえも成し遂げた。 昨大会、さらにパリ五輪に続きまたしても銀メダルに甘んじたガンナは、悔しさを隠さなかった。ただ2013年世界選で共にジュニア個人TTを戦って以来の仲良しアッフィニと、揃って表彰台に上がれたことは、「誇らしい」と胸を張る。
そのアッフィニは、ほんの10日前には生まれて初めて欧州TTチャンピオンに輝き、ここチューリッヒでは生まれて初めての世界選表彰台に飛び乗った。スタートからフィニッシュまで安定したペース配分を貫き、平地でも起伏でも黙々とリズムを刻み続けたことで……熾烈な銅メダル争いを制した。
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