死亡率も高い国民病「がん」 必修化された「がん教育」の目的とは? 【かけこみクリニック・テレビ派】
日本で最も多い死因となっている『がん』は、日本人の「国民病」と言われる身近な病気であるにも関わらず、がん検診の受診率は50%未満です。外国と比べても、高い数値とは言えません。このような状況を鑑みて、令和に入って、がんに関する正しい認識を深めることを目的とした「がん教育」が必修化となりました。その教育現場を、心療内科医の長井敏弘先生と取材しました。
死亡率が高い「がん」…早期発見のために!
がんには、日本人の2人に1人は生涯のうち、1度は罹患すると言われています。実は人間の細胞の1%は、遺伝子のコピーミスで毎日がん化しています。その中で、免疫細胞の攻撃を乗り越えたものが「がん」となります。2022年にがんで亡くなった日本人はおよそ38万6000人で、4人に1人の割合となり、死亡原因の1位となっています。
がんによる死亡率を減らすには、早期発見が重要となります。厚生労働省は、がん検診の受診率を50%以上にすることを目標に、がん検診を推進しており、ほとんどの市町村では、検診の費用の多くを公費で負担しています。
しかし、検診から足が遠のいている人は多く、例えば「乳がん」の検診率は日本は45%未満です。その他のがんの検診率も50%未満で、諸外国と比べると、低水準となっています。広島県は、乳がん検診率が全国で40位でした。
検診を受けない理由として多いのは「受ける時間がない」「健康状態に自信がある」「がんであると分かるのが怖い」です。「死」に直結するイメージが強いのですが、早期発見することで完治する場合もあり、仕事を続けながら、治療を続ける患者も多くいるといいます。
このような状況から、子どものうちから「がん」に関する正しい認識を深めることを目的に、学習指導要領の改正により、小学校では令和2年度から、中学校では令和3年度から、高等学校では令和4年度から「がん教育」が保健体育の授業の中で必修化されています。
必修化された「がん教育」とは?
「がん教育」の様子を知るために、広島大学附属高等学校を訪れました。高校1年生の保健体育の授業で、黒板の前に立つのは保健体育の先生ではありません。講師を務めるのは、広島市民病院血液内科医の西森久和(にしもり・ひさかず)さんです。「がん教育」の必修化により、外部講師による出張授業を取り入れる学校もあるそうです。広大附属では、現役医師による「がん教育」授業を10月に初めて実施しました。