【子宮けいがんとワクチン】子宮けいがん激減、発症ゼロの国も──イギリス在住研究者に聞く
■がんの前段階の高度異形成とは 日本で年間2~3万人
このようにほとんどの人がHPVに感染した状況だとして、そのうち子宮けい部に高度異形成・上皮内がんといった前がん病変(=浸潤がんになる可能性がある病変)ができる人が10%ぐらいいます。その高度異形成がある人のうち、10年20年かけて子宮けいがんになる人が20%ぐらい。つまり感染しても90%の人が自然治癒するか、ウイルスが検出されなくなる。ただ忘れてはいけないのは、感染している人のうち、問題となる10%に誰がなるのかはわからないことです。 結果として、今、日本では20歳から60歳を超えるまで、2年おきに検診し、問題となるような状態・高度異形成が発症していないか調べることが推奨されています。自分が「がん・高度異形成にならなかった90%の側だった」とわかるのが60歳超えてからなのです。90%の人はがんにならない、または途中で治る側だから大丈夫だと、20代30代で安心できるわけではありません。ワクチンを接種することは、そのリスク自体をもとから下げることができるということを理解したらいいかなと思います。 子宮けい部の高度異形成・上皮内がんの発症は、基本的に20代後半から30代前半が一番のピークになっています。日本で年間約1万人が子宮けいがんと診断されますが、がんの前段階の高度異形成が見つかる人も2~3万人います。この段階で見つけて治療して、がんになる人を半分ぐらいに減らしている(検診がなければ子宮けいがんの罹患者は今の2倍になると推定できます)のは、検診の素晴らしい点です。同時に、高度異形成が発症して治療すること自体も女性にとって負担だといえます。 がんになるかもしれないといわれれば、精神的にも参りますし、治療をして、がんにはならないとしても、将来の早産・流産の可能性の増加を含めリスクが伴います。ワクチンは、がんだけでなく、20代の高度異形成・上皮内がんも9割減らすことがデータでわかってきましたので、この段階の負担も減らすことができるということです。