【子宮けいがんとワクチン】子宮けいがん激減、発症ゼロの国も──イギリス在住研究者に聞く
■オーストラリアでは約10年後に撲滅? 発症者ゼロの国も
オーストラリアでは、子宮けいがんの撲滅が2030年代前半に達成できると推定しています。当初、26歳までを対象にキャッチアップ接種をしたことがイギリスとの違いになるでしょうか。(イギリスのキャッチアップ接種は18歳までであった)このように各国ともに、現在行っている子宮けいがん検診をベースに、思春期の女性にワクチンを導入することで子宮けいがんを撲滅していきます。 人口が少ないスコットランドやノルウェーのような国では、13歳までにワクチンを接種した集団が、2023年に行われた25歳時の初検診を受けた結果、ついに子宮けいがんの発症者がゼロということが起こりました。ワクチンが接種される前は10人程度いたのですが、HPVワクチンに子宮けいがん予防効果があることは疑いようがありません。
■12、13歳で打つことがポイント
HPVワクチン接種にあたって、非常に重要なポイントは、子宮けい部がHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染する前に接種することです。その1番の感染機会である性的活動が始まるはるか前の「前思春期」あたりで多くの人が接種することが理想です。 現在日本での子宮けいがん「発症」のピークは35歳から45歳あたりですが、その20年近くも前にウイルスに「感染」していて、20年かけて発症していることを知ることが大事です。「感染」のピークは、新しい性的なパートナーを持つ頻度に比例し、15歳から35歳頃までが大半とされます。「感染」から数年~数十年たって発症するということをまず理解してもらい、感染リスクが発生する前、定期接種の対象者の多くの人がワクチンを打つことが一番重要でしょう。 HPVに感染するのは新しい性的な、密な皮膚・粘膜の接触を持つようなパートナーを持つ時です。アメリカでの推定では生涯1人のパートナーを持つ場合、50%くらいの人ががんの原因となるようなHPVに感染している、2人いれば75%ぐらい。3人から6人の場合、90%以上となっています。つまり、平均的な性的活動があるほとんどの人が感染している、感染すること自体はありふれていると考えていいと思います。