動き出した日中関係は国民感情の改善に繋がるか…在中国日本大使館の金杉憲治特命全権大使に聞いた「2024年の中国」
トランプ大統領の就任によって世界に様々な変化が生じる
ーー2025年はどのような日中関係になっていくと考えますか? アメリカでトランプ大統領が就任することで様々な変化が世界に生じるでしょう。日米関係にも米中関係にも様々な変化が生じて、それが日中関係にも影響を及ぼしてくる可能性はあります。 そうした中で我々が重要と思っていることは戦略的互恵関係のもとで、日中関係を安定的、建設的な方向に持っていきバランスの取れた日中関係というのを実現していきたいです。 岩屋外相の訪中が実現して、その先に日本として期待している首脳レベルの会談などの日程があります。こうしたことを通じて、一歩でも二歩でも進み、日本と中国の関係が安定し建設的なものになることを目指す1年にしたいと思っています。
取材を終えて
2024年11月、南米ペルーで石破総理大臣と習近平国家主席の日中首脳会談、12月25日には日中外相会談が行われた。そして、年明け早い時期に王毅外相の来日が予定されるなど、日中間でハイレベルの交流が続く環境が整った。また、中国が日本人への短期ビザ免除を表明し、これに応える形で日本も中国人への短期ビザ緩和措置を打ち出した。市民レベルでも観光の他、経済や文化交流の機会が増え、金杉大使が指摘する「お互いの理解を深める意味での交流をしっかり再活性化していく」ことが期待されている。しかし、現状はどうだろうか。日本人に対する短期滞在ビザ免除措置は11月30日から始まったが「想定していたよりも少ない人数しか中国に来ていない」(日系の旅行関連会社)という。 王毅外相は「日中両国は脅威ではなくパートナー」と呼びかける。だが、反スパイ法への不安のほか、日本人児童らが襲撃され男子児童が亡くなった事件では、いまだに動機や詳しい背景が明らかにされていない。蘇州の事件では、中国外務省の報道官が12月27日に日本メディアの質問に答える形で、拘束されていた男が11月29日に起訴されていたことを明らかにした。起訴から約1カ月が経過しているが、日本からの観光客が増えないのはこうした情報公開のあり方にも理由があるだろう。お互いの国民感情の改善につなげるためには、日本側の努力や歩み寄りだけではなく、中国側も日本の懸念にしっかりと目に見える形で応える必要があると強く感じる。 【取材・執筆:FNN北京支局 河村忠徳】
河村忠徳,フジテレビ,国際取材部
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