動き出した日中関係は国民感情の改善に繋がるか…在中国日本大使館の金杉憲治特命全権大使に聞いた「2024年の中国」
あらゆる機会で在留邦人の安全安心の確保を求める
ーー大使は大使館の最も重要なミッションの1つに「在留邦人の保護」を掲げています。しかし今年は蘇州や深センで日本人学校の関係者が襲われる事件が相次いで起き中国に住む日本人は不安を抱えています。今回の一連の事件についてどう感じていますか? 就任以来、在留邦人の保護というのを大使館の重要な業務として掲げてきている中で、蘇州や深センの事案が発生してしまったのは残念で無念に感じています。在留邦人の方が不安に思っているのは当然だと思います。 現在、中国側と様々な意思疎通をしていて、裁判プロセスが進んでいく中で適切な形で情報提供をすると言われていますが、残念ながら今まで有意な情報というのは提供されていません。そうした事件の背景が分からない中では、我々は最大限の注意をしながら仕事をして、生活をしていくということが大切だと思います。今後も中国側にはあらゆるレベル、あらゆる機会を捉えて在留邦人の安全安心の確保というのは求めてきています。 ーー中国側から適切な情報提供はない中で「日本人が狙われた可能性」について、大使はどう考えますか? 「日本人が狙われたのではないか」ということについて確証はありませんが、我々としては今の状況の中で最大限の注意を払いながら、生活、仕事をしていくということが必要だと思っています。 ーー中国のネット上には日本人を蔑む映像や情報などがあります。大使は蘇州や深センの事件後、こういったネット上の情報に対して削除や対処することを中国側に求めてきましたが、中国側の反応や具体的な動きはありますか? ネット上で日本に対して大変厳しい「流言飛語」があるのは事実です。我々としては中国側にそれに対しての前向きな対応というのを求めています。中国側は声に出しては言いませんが、我々がモニターしている範囲では何らかの対応をしているのではないかと見受けられます。 ーー今年は公共の場での無差別殺傷事件が多発したように感じます。このような事件が起きる背景には中国社会において何があると考えますか? 中国経済が減速していく中で「社会や経済に対する不満のはけ口として無差別殺傷事件が発生しているのではないか」という見方が中国では強いと思います。ただ我々として気を付けなければいけないのは、いかなる社会状況であっても、より注意深く生活をして仕事をしていくということだと思います。大使館としても領事メールや何かの形にして在留邦人の方には情報提供をしていきたいと思っています。 ーー安全確保の観点から12月13日の「南京の日」に中国にある日本人学校は児童や生徒の登校を取りやめました。これに対して大使はどのように感じていますか? 12月13日に子供が登校できなかったということは、我々にとって大変残念な状況です。最終的にはそれぞれの学校が地元の状況に応じて判断したことではありますが、今年について言えばやむを得なかったのではないかと思います。 ただ、子供たちに適切な学びの場を提供するということは我々の責務でありますから、最終的には学校の判断にはなりますが、日本政府としてできること、中国政府に求めていくことをしっかりやりながら適切な学びの場を提供する環境整備は最大限進めていきたいと思っています。
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