ホンダ三部氏の目に映る日産「救済」の損得、EV化加速が迫った決心
日産には日本で最も売れた軽のEV「サクラ」がある。いくつかのラインアップを展開するハイブリッド技術「イーパワー」を搭載した車両も、日本では比較的好調だ。
日産とホンダに三菱自動車が加わることとなれば、持ち株会社計画はさらに魅力的になるだろう。三菱自はプラグインハイブリッド車やスポーツ用多目的車(SUV)が新興市場で人気だ。
課題と望み
マッコーリー証券のアナリスト、ジェームズ・ホン氏は、両社の計画について「生産能力の最適化を伴わない」のであれば意味がないと警告する。中国における両社の生産能力はともに過剰で、「今すぐ最適化すべき問題」だからだ。
一方、ガングリ氏は、両社には「補完的な事業よりも重複の方が多い」と問題を提起する。相乗効果を得るためには重複部分も必要だが、競争上の優位性を確保するには補完的な事業も重要だからだ。
ホンダは30年までにHV販売年間130万台という目標を掲げる。中国以外で23年に販売した65万台のほぼ2倍だ。26年には2つの車両生産プラットフォームと、より効率的で収益性の見込める2種類のパワートレインを導入する計画だ。
日産の北米での収益悪化は、魅力的なHVがないばかりか、時代遅れのラインナップしかなかったからだ。米国では、ほぼ4割にあたる約1000のショールームで上期に損失計上した。だが、ホンダが投入を計画するHVを日産も搭載できれば、問題解決につながる可能性もある。
短期的にホンダとの計画が進行することで、日産の財務状況がどう変化するか見通しづらいが、ホンダの二輪車事業はある種の救いとなる可能性がある。同社の二輪車事業は利益率が高く、9月30日までの3カ月で東南アジアを中心に530万台を販売した。
だが、これらを傘下に収めることになる持ち株会社の上場は早くても26年8月以降の予定で、長い道のりだと認めざるを得ない。
ガングリ氏は、両社の描くシナリオの裏で経済産業省がどんな役割を果たしているのか分からない状況は「曖昧さ」があると言わざるを得ず、「これほどの規模の統合だと、うまくいくかが判明するまでに3ー5年かかるだろう」と予想する。
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Nicholas Takahashi, Chester Dawson