「つなぎの4番」大きな収穫 農業実習の合間に練習 帯広農・前田 交流試合
上空に広がる真夏の青空。昼過ぎから始まる第2試合を前に、甲子園のグラウンドに立った4番打者は焼けつくような暑さに「いよいよだな」と気持ちを高ぶらせていた。 【帯広農-健大高崎】熱戦を写真特集で 昨秋の新チームからは一貫して4番に座るムードメーカー。スタンドに駆けつけた父憲一さん(62)は「うちの息子が」と最初は驚きを隠せなかったというが、母恵美さん(46)は「持ち前の明るさと大きい声で周りの士気を上げる子です」と、甲子園でも4番として打席に立つ息子の姿を誇らしげに見つめる。 同校は農業実習があるため、全体練習ができるのは週末がほとんど。普段の練習後も夜遅くまで残って自主練習を欠かさない。前田康晴監督もその姿から「努力で勝ち取った打順。前田が4番だと打線がつながる」と厚い信頼を寄せる。 この日は3打数無安打だったが、三回には1死三塁からスクイズを決め、「つなぎの4番」としての役割を果たした。エラーもあったが、すぐに切り替え声を張り上げた。試合後、「緊張はしなかった。一回ごとに集中して勝負できた」と、白い歯を見せた。 高校2年で膝をけがした時期に興味を持った理学療法士を目指すが、野球も続けるつもりだ。今回の交流試合を胸に刻み、新たな道を歩み出す。【菊地美彩】