「ホモ・ヒストリクスは年を数える」(12)――誕生日文化と命日文化(上)
ハロウィン
ちなみに、万聖節前日の10月31日は、ハロウィンの日である。 カボチャをくりぬいて中に火をともすジャック・オー・ランタンは、日本でも最近よく目にするようになった。ハロウィンは、Halloweenと綴り、全聖人の日の前夜祭という意味(The eve of All Hallows' or All Saints')である。 ところが、ハロウィンの祭り自体は、キリスト教ではなく、ケルト文化に由来する祭りだ。古ケルトのカレンダーでは11月1日が新年で、従ってケルト社会では10月31日は「大晦日」にあたる。そして、「大晦日」の夜はすべての魔女ウイッチの夜とされていた。これを、キリスト教が自分たちの都合の良い解釈で「全聖人の日の前夜祭」に変えてしまったというわけだ。 つまり、ケルト文化に由来する大晦日の賑やかで騒々しい祭りだけを残し、ケルトの新年に代えて、翌日を万聖節、翌々日を万霊節というキリスト教にとって重要な行事の日を設定したと言えるだろう。 これは、ヨーロッパのキリスト教文化が、それ以前に存在していたケルト文化を取り込んだ上に成り立っていることを物語っている。(阿部謹也著の『ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界』〔1988、ちくま文庫〕は、キリスト教とケルト文化の関係を知るのに手頃な書物である) 私は、ラテガン教授が指摘した日本とヨーロッパの違いを「誕生日文化」と「命日文化」と名付けようと思う。(下)では、この2つの文化と日本との関係について、もう少し詳しく述べてみたい。