渋谷区の「同性カップル証明書」全国初の条例は広がるか
多様性を受容する国際都市へ
31日の本会議では賛成と反対の立場から討論が行われました。反対意見は「区側の説明が不十分」、「男女共同参画社会さえ達していない」などで、賛成は「条例によって共生のメッセージが伝わる」、「偏見や差別、不便さが解消する」といったものでした。採決では出席議員31人のうち、自民ら10人の区議が反対しましたが、賛成多数で成立しました。 委員会の審議の中で、セクシャルマイノリティだけでなく、男女平等に関する条例でもあることから、理念を守るように、区民や事業者に理解を求めたり、規則については議論の余地があり、慎重な運用が求められることから、この条例には、附帯決議が付きました。特に、公表規定については避けるように求めています。議員提案で削除を求める可能性を示唆しています。 区議会で最初にパートナーシップ証明書の発行が提案されたのは2012年6月定例会でした。提案したのは長谷部健議員です。「この証明書を発行することでLGBTの方々の区民が増えると思います。ファッション、アートを盛り上げるには、彼らの感性は大きな要素となるでしょう」などと、多様性を受容する国際都市づくりの文脈で、区長に提案していたのです。その後も別の議員が同様の質問をしました。 これらの提案を受けて、渋谷区では昨年7月、弁護士や有識者ら8人のメンバーで検討委員会を立ち上げ、当事者からヒアリングをしてきました。 世田谷区でも同様の条例案をつくる動きがみられます。2月15日に「性的少数者の成人式」を開催。その席で保坂展人区長は、渋谷区と同様に、支援策を準備していると述べています。
同性カップル「これを機に議論加速を」
「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」の共同代表をしている遠藤まめたさんは「『好きな人と安心して暮らしたい』という当たり前の願いが、LGBTの場合には難しい現状があります。渋谷区の条例は、自治体の権限内の制約はあるものの、大きな転換点です。法律や慣例、社会の中にある誤解や偏見など、様々な課題はありますが、時代を突破する一歩として歓迎します」と評価しています。 今月に女優・杉森茜さんと結婚式を挙げる予定のタレントの一ノ瀬文香さんはこう話しています。 「新たな一歩で大変嬉しいです。ただ、証明書を発行してもらうために、労力と(手数料や登記料を含めて)数万~10万円程度のお金を使って公正証書を作らなくてはいけないという条件付き。また、法的効力がないので、婚姻届に比べて役立つ割合がかなり低いと予想されます。これを機に、他の先進国同様に議論が加速してほしいです。オリンピック前に、杉森茜と法的にも結婚したい!GHQ草案を読むと分かりますが、憲法で同性婚は禁止されていませんしね」 ただし、複雑な気持ちを抱く当事者もいます。匿名を条件に取材に答えたレズビアンの女性は、渋谷区が宮下公園からホームレス(野宿者)を排除したとして、「渋谷区の公園で暮らしている友人がいます。野宿者の中のセクマイと繋がりもあります。渋谷区が野宿者に何をしてきたのかを知っていますので、混乱しています。軽々しく賛成とは言えません」と違和感を覚えています。つまり、セクシャルマイノリティの人々の権利拡充は歓迎しつつも、他の人権施策への姿勢に懸念を示しているのです。