ディフェンダーだけじゃない!ランクル・プラドも大活躍する 007の人気作!【映画の中のクロカン四駆たち】
人々を魅了するエンターテイメントの王道である映画、感動のストーリーもさることならば、クルマ好きは劇中に登場するクルマにも目が行ってしまうに違いないだろう。そんな劇中の車を紹介してく当企画「映画の中のクロカン四駆たち」では、クロカン四駆にフォーカスしてご紹介していこう。第5回目はトヨタランドクルーザー プラド90系 が活躍する 「 007 ノー・タイム・トゥ・ダイ(MGM 2021年)」だ。 【写真】ランクル・プラドなど「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」に登場するクロカン四駆を写真で紹介 TEXT:山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka) PHOTO:MGM 英国クロカン4WDが多数登場!スパイアクション映画の金字塔 クロカン4WDが劇中で活躍する作品は数多いが、そのアクションのリアルさも含めて好きなのが、「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」だ。 007映画は、歴代作品の中に多くのクロカン4WDが登場することで知られているが、同作にはてんこ盛りだ。まず最初に登場するのが、「ランドローバー シリーズIII」。シリーズIIIは後にマイチェンを行い、それと同時に「ディフェンダー」というモデル名に変わるのだが、ジェームス・ボンドの愛車として登場するシリーズIIIは、マイチェンする直前のモデル。 すでにフェンダーミラーからドアミラーに変わっているし、それも樹脂製が付いている。劇中に登場するのは90のソフトトップで、見たからにしてコンディションがいい。特にカーアクションを繰り広げるわけではないのだが、アストンマーチンと同様、栄光に満ちていた時代の英国車として、印象的に登場する。 実はこの登場は、後のストーリーの伏線なのだが、この時は「やはり英国車代表と言えば、やはりランドローバーだな」と観る者に思わせているのである。 懐かしの2代目ランドクルーザープラドも頑張っている! だが、今回の主役はランドクルーザープラドだ。劇中に登場するのは、2代目モデルである90系。同作の準主役であるマドレーヌ・スワンの愛車という設定なのだが、色が日本では不人気だったゴールドというのが渋い。 登場する車両はバンパーを見る限り前期型で、海外仕様ということもあって日本では前期型3ドアモデルに採用されていた縦格子グリルを付けている。また、法規がないのでサイドアンダーミラーは装着されておらず、非常にシャープな印象だ。 そして、90プラドが派手なアクションシーンを繰り広げる時に敵役なのが、モノコックボディになった新世代のランドローバー「ディフェンダー」なのである。前半でシリーズIIIが出ていたのは、新世代ディフェンダーに繋げるための仕掛けだったのである。 それにしても思い切ったなと思うのが、あからさまなタイアップでありながら、新型車を敵役にして、ロートルの90プラドを主役に乗せさせたことだ。この古いランクルにやられてしまうのはイメージダウンではないのかと心配になるのだが、そこには深い目的が隠されている気がするのである。それについては後ほど。 さて、90系のプラドは2代目三菱「パジェロ」のヒットに慌てたトヨタが、なりふり構わぬという感じでデビューさせたクルマだ。特に3ドアモデルの顔はパジェロにそっくりで、デビュー当時は各方面から賛否両論の意見が飛び交った。5ドアモデルもパジェロロングに寄せたデザイン、カラーリングを採用しており、とにかく打倒パジェロにやっきだったのである。 メカニズムでも、パジェロがフルタイム4WDモードを持った「スーパーセレクト4WD」を装備していたため、プラドも90系からフルタイム4WDに変更。2WDモードは持たず、HからHL、LLに入れるとセンターデフロックが作動する機構になっていた。 それゆえ、やはりフルタイム4WDであるディフェンダーと互角に戦えるわけである。ボンドが走行中にどのモードにトランスファーを入れていたかは分からないが、渡河シーンや森林シーンを考えればセンターデフをロックしていたということも予想できるのだが。 とにかく相手は、最新の電子デバイスであらゆる路面に対応できる新型車だ。それをどうやって倒すのかというアイデアが、実は素晴らしい。4WD車というのは、実は勢いがあると斜面を駆け上がってしまったり、駆け下りたりして、簡単に横転するという弱点がある。昨今、高速道路の路肩の斜面が緩やかだったり、ガードロープにしているのはそれも配慮してのことだ。 この弱みを利用して、相手をどんどん横転させるボンドの戦い方がリアルなのである。そして、ここに先ほどの疑問がつながる。なぜ敵役に最新のディフェンダーを採用したのか。 ディフェンダーは先祖のランドローバーシリーズI、II、III、そして先代ディフェンダーまでラダーフレームにアルミボディを載せるという構造を採用してきた。アルミボディはさほど強くないが腐りにくいし、その上ラダーフレームの強靱さは折り紙付きだ。未だに英国植民地だった地で多くのランドローバー車が現役なのは、この構造のおかげであることは間違いない。 ところが、現行型のディフェンダーはアルミのモノコックボディになってしまった。ワークホースと讃えられ続けてきたディフェンダーがそれでいいのか! 世界のユーザーから一斉に非難の声が挙がったのである。 しかしジャガーランドローバー社は、このボディはラダーフレーム構造をはるかに上回る剛性と耐久性と持っていることをアピール。実際、劇中で転倒したディフェンダーはボディの損傷が少なく、しっかりライフゾーンが確保されていることが見てとれる。実はそんな戦略もあって、敵役への採用なのではと考えるのはうがち過ぎだろうか。 いずれにせよ、90プラドがここまで活躍する映画は珍しく、今も日本に多くいるユーザーは溜飲を下げたにちがいない。
山崎友貴