Yahoo!ニュースのコメントに「全国旅行支援は税金の無駄遣い」 専門家が解説
富裕層を優遇?
次に、旅行費用への援助が必要かという根本的な疑問だ。 今年の1月に大阪市内ので実施された府民割のツアーに参加した60歳代の女性は、「参加している人たちは、高齢者の余裕のある人ですよね。早くから予約できて、平日にゆっくり参加できるんですから。ありがたいけれど、必要かしら」と言う。もともと余裕のある富裕層に対して、旅行費用の補助を行う必要があるのかという批判は、GoToトラベルの時から続いている。 「うちのようなビジネスホテルでは、効果があったのかなかったのか難しいところです。やはり補助がでるから、普段泊まらない高級なところに宿泊しようかというお客さんが利用するのではないでしょうか」というのは、京都市内のビジネスホテルの支配人だ。 旅行支援に関しては、定額給付金と同様の問題が指摘されている。つまり、本来必要のない富裕層に税金が還元され、もともと補助がなくとも購入するモノに消費されたり、あるいは貯蓄に回ったりするだけだという指摘だ。
旅行業界だけ優遇?
最後に政治的な問題だ。新型コロナ発生以降、観光業界に対する支援策などは、他業界と比較すると迅速でかつ巨額の予算が組まれてきた。 観光業界を代表する全国旅行業協会(ANTA)の会長は自民党の二階俊博氏。ANTAが5月31日に、甲府市で2年ぶりに国内観光活性化フォーラムを開催し、その場で二階氏は「観光は、コロナ禍により他産業と比較にならないほど厳しい状況」にあるとして、新型コロナ禍後の観光産業の復興を訴えた。 観光業界への積極的な政府の支援の背景に、こうした与党有力議員の剛腕が透けて見え、他業界からは「優遇されている」という印象を持たれがちとなる。
倒産が増加している観光業界
帝国データバンクが公表した資料によると、8月23日現在までの新型コロナウイルス関連と確認できた全国での倒産のうち、全業種3924件に対して、観光関連事業者(ホテル・旅館、旅行業、観光バス、土産物店など)の倒産は累計で295件となっている。 業種別では飲食店(593件)、建設・工事業(495件)、食品卸し(200件)に次いでホテル・旅館が158件となっている。その他、旅行業は46件、タクシー・バス運行は45件となっている。倒産時期では、2020年に840件、2021年に1769件、2022年は8月23日現在までで1315件となっており、年間で計2000件に達する可能性がある。2022年の月別では3月が208件で最も多く、その後も100件を超す状況となっている。 こうした状況の中で、観光業界からは、早期の全国旅行支援や新GoToキャンペーンの実施を求める声が高まってきていた。富裕層優遇の批判に対しても、結果的に地方の観光業界に幅広く、還元されることを考えれば、その経済効果は高いと意見もある。