斎藤氏再選が示す「ポピュリズム到来」日本にも、「大衆迎合」とは片付けられない潮流がネットと結びついた
これに対しテレビの利用時間は10代、20代が1時間を割っている。テレビの利用時間がネットを上回っているのは60代以上だけだ。そして新聞の利用時間は若い世代はほとんどゼロに等しい。 つまり若い世代を中心に多くの国民が、「新聞・テレビ」という伝統メディアから情報を得ることはほとんどなくなってしまったのだ。 ■ネット空間を飛び交ったSNSや動画 また兵庫県知事選でNHKが実施した出口調査の結果と、上記のネットとテレビの利用時間の年代別比較の結果を見比べると、面白いことがわかる。
出口調査では、若い世代を中心に斎藤元彦氏への投票が多く、2位となった稲村和美氏が斎藤氏を上回ったのは60代以上だけだった。一方、利用時間調査の結果は、若い世代ほどネット利用時間が多く、テレビがネットを上回っているのは60代以上だけだった。 つまりネットの利用時間と斎藤氏の支持は明らかに相関関係にある。 同じような現象が7月の東京都知事選挙での石丸伸二氏の得票や、10月の総選挙での国民民主党の躍進でも起きた。
3つの選挙に共通しているのは、シンプルなメッセージの動画やSNSが政党や候補者の選挙事務所などだけでなく、支持者をはじめ多くのユーザーなどによって頻繁に発信されることだ。中には明確な誤りや真偽不明のものもあるが、そんなことはお構いなしにネット空間に広がっていく。コメントを含め拡散が加速度的に進む。 特にネット利用時間の長い若い世代を中心に広がることはいうまでもない。これまで選挙に無関心だった若い世代などの層の好奇心に火がつき、遊説を見に行くなどの行動につながっていった。その結果、投票率もあがった。今までにない選挙運動の形態である。
こうした現象を起こしたのは、ネット空間が持つ独特の機能だ。 SNSやYouTubeなどのユーザーは、すべての政党や候補者の情報を網羅的に求めるわけではない。たまたま目にした情報が面白いと思って何度かアクセスする。するとアルゴリズムが働き、以後、その候補者に関する肯定的な情報が優先的にかつ頻繁に表示されるようになる。 似たような傾向の情報に繰り返し接することで、ユーザーはその候補者を信じるようになってしまう。これがネット空間でよく言われる「フィルターバブル」と「エコーチェンバー」という機能である。