斎藤氏再選が示す「ポピュリズム到来」日本にも、「大衆迎合」とは片付けられない潮流がネットと結びついた
ユーザーは閉ざされたネット空間で特定の政党や候補者を支持する情報に接する一方で、批判的な情報、あるいはほかの候補者に関する情報はあまり表示されない。その結果、それが当たり前だと思い込んでいく。 アメリカ大統領選挙でトランプ氏を妄信的に支持する集団が生まれたのも、こうした機能の結果である。 ■プラットフォーム商法が生んだ政治的現象 Googleなどのプラットフォームがユーザーの気に入った情報を優先的に表示することを重視するのは、政治的目的からではない。ユーザーの関心に沿った情報を選択的に表示し利用時間をできるだけ長くすることで、広告収入を増やすためである。
ユーザーの関心を刺激して利用時間を稼ぐ、これが「アテンションエコノミー」と呼ばれるプラットフォームの商法である。この「アテンションエコノミー」商法が、兵庫県知事選などの選挙で予期せぬ政治的現象を生み出したのだ。 こうした選挙には、ほかにも共通点がある。ネット空間で支持が広がる政党や候補者は、現在の体制=エスタブリッシュメントに挑戦する正義の味方というイメージが作られている点だ。石丸氏や斎藤氏が、いつの間にか自民党や県庁職員らと戦う正義の味方となっていくのである。
もちろんネット空間では、かつてのような利益誘導は武器にならない。訴える政策の全体像は不明確だが、何か壊してくれる、新しいことをしてくれそうだという、現状破壊願望が生まれて支持につながっていくのである。 またネットの利用時間が極端に長い若い世代がひきこまれていくのも共通している。この階層はこれまで政治にも選挙にもあまり関心はなかったが、ネットがきっかけで行動するのである。 こうした現象はいわゆるポピュリズムの概念にあてはまるだろう。
ポピュリズムは一般的には、既存の政治権力やエリート層を批判し、現状の変革を人々に訴えて改革を目指す運動とされている。人気を得ることを優先する「大衆迎合主義」ともいわれるが、それほど単純で軽薄な概念ではない。 欧米諸国ではすでに大きな政治的潮流とみなされているが、日本ではこれまでは目立った動きはないとされていた。 今年、日本で行われた上記の3つの選挙は、当事者がどこまで意識しているかは別にして、ポピュリズム的運動がネット空間と結びついた初めてのケースといえるだろう。その結果、これまで政治的に軽視されていた若者はじめヘビーなネットユーザーらが大量に動員され、選挙結果を大きく動かしたのだ。