おしどり贈与とは?メリット・デメリットと向いているケース、利用時の注意点を解説
5. おしどり贈与が向いている人
「おしどり贈与」が向いているのは、次のような人です。 ・財産の少ない配偶者に、すぐにまとまった財産をあげたい人 ・配偶者への贈与で、相続税の金額をすぐに減らしたい人 ・配偶者に必ず住まいを残してあげたい人 ・夫婦で住んでいる自宅を将来売却予定で、売却すると高額な税金がかかりそうな人 上記のケースにあてはまる人は、デメリットも踏まえた上で「おしどり贈与」を検討するとよいでしょう。判断に迷う場合には、税理士への相談を検討しましょう。
6. おしどり贈与の手続きのやり方・必要書類
「おしどり贈与」の手続きのやり方・必要書類を見ていきましょう。 6-1. ステップ1:贈与を行う まず、夫婦間で居住用不動産の贈与を行います。贈与は口頭でも成立しますが、贈与がこの日に確実に行われたことを証明するために、「贈与契約書」を作成して夫婦それぞれで保管しておきましょう。 より確実に贈与の記録を残すのであれば、法務局や公証役場で「確定日付」を取得する方法があります(手数料1通700円)。「確定日付」は、公証人が日付のある印章(確定日付印)を押捺した日付で、その日に確かにその贈与契約書が存在したという第三者の証明になります。 6-2. ステップ2:法務局へ贈与登記の申請をする 法務局へ贈与登記の申請を行います。贈与登記とは、贈与による不動産の名義変更手続きのことです。 贈与登記の申請には、贈与契約書、登記申請書のほか、次の書類が必要になります。 【贈与者】 ・登記済権利証または登記識別情報通知 ・印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの) ・固定資産評価証明書(贈与登記する年度のもの) 【受贈者】 ・住民票の写し 登記申請は、書面またはオンライン申請のいずれかで行いますが、司法書士に依頼する方法もあります(有償)。なお、贈与登記には本当に贈与することを理解しているのか、贈与する意思はあるのか、認知症ではないかなど、法律行為ができるかどうかの判断能力が問われますので、早めに行いましょう。 6-3. ステップ3:贈与税の申告書を作成する 法務局への贈与登記が終わったら、贈与税を計算して申告書を作成します。 「おしどり贈与」を受けるには、贈与を受けた配偶者が、自身の住所を管轄する税務署に、贈与税の申告をしなければいけません。たとえ贈与税が0円でも必要です。 申告期限は贈与を受けた年の翌年3月15日(土日祝の場合は翌日)と定められているため、それまでに贈与税を計算し、申告書を作成しましょう。贈与税を納める場合には、申告期限までに納税します。 贈与税の申告書例については、国税庁の【事例3】贈与税の配偶者控除の特例を適用する場合を参考にしてください。 なお、贈与税の計算は、贈与財産の金額から「おしどり贈与」の配偶者控除額(最高2,000万円)と基礎控除(110万円)を引き、算出された課税価格に税率を掛け、最後に課税価格に応じて定められた控除額を引いて求めます。 贈与財産の金額は、居住用不動産の場合、土地は路線価または倍率方式(路線価が定められていない地域)で計算して算出された金額、建物は固定資産税評価額で計算します。居住用不動産を取得するための金銭の場合は、その金額となります。 また、贈与税の税率は国税庁の速算表を用います。「おしどり贈与」は夫婦間の贈与のため、一般税率で計算します。 (例)「おしどり贈与」で5,000万円贈与 課税価格:5,000万円 - 2,000万円(おしどり贈与による控除)- 110万円(基礎控除)= 2,890万円 贈与税: 2,890万円 × 50%(税率)- 250万円(控除額)= 1,195万円 6-4. ステップ4:期限内に申告書を提出(確定申告)する 申告書が作成できたら、贈与を受けた年の翌年3月15日(土日祝の場合は翌日)までに贈与税の申告を行います。贈与税を納める場合には、申告期限までに納税します。期限を過ぎると延滞税がかかる場合がありますので、注意しましょう。 「おしどり贈与」の適用を受けるためには、贈与税の申告書に、次の書類を添付します。 ・贈与を受けた配偶者の戸籍謄本または抄本(贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成されたもの) ・贈与を受けた配偶者の戸籍の附票の写し(贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成されたもの) ・居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの 登記事項証明書は、贈与税の申告書に不動産番号の記載などができれば、添付しなくても問題ありません。 なお、現金ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、上記の書類のほかに、その居住用不動産を評価した固定資産税の評価明細書などの書類が必要です。