おしどり贈与とは?メリット・デメリットと向いているケース、利用時の注意点を解説
7. おしどり贈与をする場合の注意点
「おしどり贈与」をする場合の注意点を見ていきましょう。 7-1. 同一配偶者からの贈与は1回だけ 同じ配偶者からの贈与については、一生に一度しか適用を受けることができません。同じ人と再婚したとしても、適用できるのは1回だけです。 別の人と再婚した場合、その配偶者同士で適用できますが、20年以上の婚姻期間が必要なので、すぐに使えるわけではありません。 7-2. 二次相続も含めて考えることが必要 「おしどり贈与」をする際には、二次相続も含めて考えることが必要です。二次相続とは、配偶者のどちらか一方が亡くなって相続が発生したあと(一次相続)、もう一方の配偶者が亡くなったときに発生する相続を指します。「おしどり贈与」を利用しても、二次相続時に子や孫に発生する相続税の負担が減らないだけでなく、場合によっては利用することで増える可能性があります。 土地・家屋は、相続財産の約4割を占めると言われる大きな財産ですが、「おしどり贈与」なら、この大きな財産を最高2,110万円まで贈与税がかからず移転でき、かつ、相続税を大幅に減らすことが可能です。 例えば、基礎控除後の夫の財産が1億2,000万円の場合、相続税の税率は40%です。「おしどり贈与」で夫が妻に2,000万円贈与をすると夫の相続税の税率は30%となります。相続税は財産が多いほど税率が高い税金ですが、贈与の金額によっては税率を下げる効果も期待できます。 一方、「おしどり贈与」をすると、妻の財産が増えることになります。それによって妻の財産が相続税の基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超えた場合、将来妻が亡くなったときには、引き継ぐ子が相続税を支払うことになります。つまり、「おしどり贈与」をしなければ発生しなかった相続税が生じる可能性があるのです。 それ以外にも、周囲の環境変化などで土地の価格が高騰し、「おしどり贈与」をした自宅の相続税評価額が高額になることもありえます。 このように、「おしどり贈与」を利用しても子や孫が負担する相続税は減らない、むしろ利用すると逆に増えてしまう場合もあるため、注意が必要です。